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万年筆 PILOT カスタム743 / 神戸・元町 Pen and message. 

 



今使っている万年筆が「ちょっと細いかな」とかインクがもっとだくだく出ればいいのに、とか小さな不満がちまちま溜まっていった。

おまけに日々くたびれてたり、ストレス溜まってゲームばかりしていて、さっぱり手帳やノートに向かなくなっている。

ついでに言っちゃえば、今健診でふっくらどころかふくふくになってるのがはっきりしたよ。むむぅ!

仕事での運動量が減ったし、なんというかいい感じに動けてないんだよなぁ。

おやつも減らしているんだけどなぁ。むぅ!!!


さて、まぁ、異動後にはありがちな状態なんですけど。なんでちょっとしたことにもイライラしちゃってさ。

悪循環ですよ。平日はつまんなくて書きたいことなくて。


でもどこかで「金ペン」と呼ばれる万年筆がほしいなぁ、と思っていたんです。

一応、1本は持っています。

PILOTのカスタム74。字幅は「EF」という極細字です。

でもインクフローが気に入らず2回調整してもらっているのですが、それでも気に入らず。

次第にもうちょっと字幅が広いもので書きたくもなり、洗浄してインクを入れていません。

普段使っているのはスチールの安価な万年筆。それでもなかなかいい仕事をするんですよ。

だがしかし。金ペン特有のちょっとふかふかした書き味がもう1度味わいたくて、普段から使っている「F」(細字)の金ペンがほしいなぁ、となったのでした。






ちょっと前、今よりもうちょっと万年筆に関心を寄せていた頃があり、いつものように好奇心の赴くまま、ネットであれこれ調べては眺めていました。

そんな中で知ったのが、神戸・元町にある「Pen and message.」というお店でした。

万年筆は安い買い物でないことも多く、しかし思い切って買うには知識もないし、そもそも「自分になにが向いているのか」さえわかりません。

試筆できる、といっても、なんというか。初めての金ペンを買ったときにも一応は試筆しましたが、「書きたいものを試せますよ」という感じで、「だーかーらーーー。自分が書きたいもの、使いたいものがわからないんだってば!」とかみ合わない会話をしているようでした。

なのでいつか、専門の方にお尋ねしながら万年筆を買いたいな、と思っていました。

そして、なんとなくこのお店ならそれができそうな気がして、Google マップを頼りに歩いて訪ねました。

このときすでに快晴炎天下の中、明石城址を2時間歩き回り、魚の棚商店街も歩き回って日本酒を1合入れ(握りも9貫食べた)、明石から神戸に明石のお土産も詰め込んだ40Lのザックを背負って移動し、三宮から10分くらい歩いて宿に荷物を預け、そのあと紅茶を飲んで休憩したけれど元町まで20~30分くらいかけて歩いていましてね。汗だくのよろよろだったのです。

お店やお店の方のことはあとでまとめて書きましょう。



お店には常連さんのような人たちとお買い物をしている人たちとがすでにいらっしゃいました。

私はとりあえず、お店の中のものを見て、それから万年筆が並んだ棚を眺めました。

うーん、やっぱりわからん!

どれがいいのかわからないので、頃合いを見計らってお店の方に声をかけようと思っていましたが、先にお店の方が声をかけてくださいました。

細いストライプの爽やかなジャケットのお兄さんでした。多分、シャツにはカフスボタン!(見るとこ、そこかよ!そして声優の福山潤さんに雰囲気が似てる!と勝手に思っていました)


万年筆とインクを探していることをお伝えすると、どんなときに万年筆を使うのかを聞かれました。

手帳に書く、というと手帳の大きさも聞かれました。

システム手帳の小さなものは短い万年筆を合わせている人の動画やインスタを見たことがあります。

私は長さには無頓着で適当にしているのと、万年筆を持ち歩いていないので「そっか~!」と思い、そして「来たぞー、プロのお仕事!」とどきどきしながらお兄さんにすべてを委ねることにしました。

試筆ができる机の前に座り、まずは4本くらい試します。

そこで字幅や書きやすさなどをあれこれ試します。

インクはモンブランでした。

初めてですよ、モンブランのインク!

この4本の中でも、セーラーよりパイロットの万年筆のほうが書きやすかったです。


いえね、地元はセーラーですからできたらセーラー製品も購入したい、とは思っているのですが、これまでも何回か試筆しているけれどやっぱりパイロットの万年筆が書きやすいのです。

今回もそうでしたが、ちょっぴり「もしかして、あのペリカンとか外国の万年筆デビューとかもしちゃうのかしら」とも思っていました。


私が試筆するたびに「では、こちらを」とお兄さんは新しい万年筆を用意してくださいます。そして「だいぶ、絞られてきましたよ」と、なりました。

私も「そ、そうですね」と緊張した声で心の中で返事をしました。


いや、やっぱりプロのお仕事はすごいです。

どんどん「あ、これだ!」という万年筆が出てきます。


最後に渋いもの2本と、私が女性のせいか華やかでちょっと華奢な綺麗なデザインのもの1本が残りました。

そして、私が選んだのは「パイロットのカスタム743」。字幅は「FM」(中細字)の黒。

日本のメーカーの「質実剛健」みたいな。「万年筆です。それ以上でも以下でもありません」という、シンプルというか華やぎも、あまり好きじゃない表現だけど女性らしさもない、宮崎駿監督の「風立ちぬ」の堀越二郎のような黒縁眼鏡をかけた、黒川みたいな印象の万年筆です。

内心、私は爆笑していました。

「さすがだよ、あたい!」

いや、自分にぴったり。これが繊細な万年筆にたどり着いたほうが「え?あたい、なにがあったの?え?」とすっごくびっくりしていたと思います。

思い切り自分らしくて、愉快な気分になりました。

そこにたどり着かせてくださったお兄さんもすごいです。








さて万年筆を選びながらも、インクも選ばなくちゃなりません。

「ターコイズを探しています」と言うと、ちょっとびっくりされました。

字を書くには明るすぎる青です。でも、私の好きな色です。

ちょっと暗めの青も使ってみたのですが、心がときめきませんでした。


そして、今はないイタリアのメーカー「オマス」のターコイズのインクがいいのだと話すと、意外そうな様子でした。

ですよねぇ。

オマスのターコイズのインクをお裾分けしてもらったことがあり、その色が忘れられなくて、それに近い色がないか探しているのだ。と付け足しました。

「ちょっと緑が入っていて独特」と話したのですが、もうちょっと語ってよければ「セクシー」なんです。

どこが?と問われればよくわからないのですが、「色気」と日本語にしてしまうとちょっとニュアンスが変わってしまう感じの、シニョーラというか、やっぱりイタリア人の大人の色気というか、セクシーなんです。

それにくらくらさせられながら書くのが好き。

と言っちゃうと、引かれそうなので、今ブログに書いているのですが。ええ。


隣の机にいらした店主さんとお客さんも会話に入ってきて、「インクブレンダーの人に作ってもらうのがいいのでは」ということになりました。

ええ、それも考えたのですよ。

しかし広島にいると、どうやったらインクブレンダーの人に会えるのかさっぱり。

インクブレンダーさんのイベント参加も考えましたが、今は思ったときに休みが取りにくくなちゃったしねぇ。


結局、実際に紙にそのインクで書いたり塗ったりした色見本を見て、爽やかなヴィスコンティという、これまたイタリアのメーカーの素敵ボトルに入ったターコイズにしました。


お兄さんがコンバーターの使い方とヴィスコンティのインク瓶の扱い方を説明してくださり、保証などの説明をしていただいているときにインクフローの話になり「インクはどばどば出るのが好きです」と言ったもんだから、調整してくださることになりました。

が、もう万年筆にはインクが入っています。

お兄さんは指先を真っ青にしながら調整してくださいます。

「そ、その素敵爽やかジャケットにインクがついたらどうしよう!」と私は心配でどきどきが止まりません。

ええ、所作がおきれいで指先もおきれいで、洒落たお姿なのに袖にインクがついたらどうしよう!

私の心配をよそに、お兄さんは調整を終えました。


また、3万円以上の万年筆には靴職人さんのところで出る革の端材で作られたペンケースをつけてくださる、ということで2種類出してくださいました。

すっとこどっこいなので「汚れの目立たない黒」にしようかと思いましたが、薄くて吸い付くような手触りが忘れられず、私は淡い黄土色の革のケースにしました。






さあ、お店の話をしましょうか。


まずは私は定休日もなにも調べずに訪ねてしまいましたが、確認をしておくほうがいいです。

私も1週間違っていたら、イベント出店のため臨時休店でした。

それから来店予約、調整予約をしていくのが良さそうです。

ほんとに私はたまたまラッキーだったようで、他に万年筆を買ったり調整したりするお客さんがいらっしゃらなかったのですぐに対応していただけましたが、そうでなければずいぶん待つかもしれません。

私のときでさえ、30分以上はかかっています。