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サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法 - 広島県立美術館

2021/06/05

広島県美の年明け一発目はサヴィニャック!

彼の名前を聞くとすぐに思い浮かべるのは、でっかい板チョコにかじりついてお口のまわりをチョコレートまみれにしている男の子の作品だ。

あの無邪気で大胆な作品の雰囲気が好きなので、見に行ってきた。



入り口、どうですか!
国旗のキリンはエア・フランスの広告。
飛行機全然関係ないキリンさんなのに、いろんな国に行ってみたい!という思いで、首が長くながーーーく伸びた感じが楽しい。

ゾウさんシャワーの男の子は子ども向けのイベントポスター。
憧れるよ、ゾウさんシャワー!!
ライオンの背中に乗って草原を回ったり、オランウータンの作った木の上のベッドに一緒に眠ってみたい。

最初からテンション高めで入場。




初期の作品は、2色と色を使わないことで表現する白の3色のポスター。
楽しい作品もたくさん見たけれど、これが一番印象に残った。
なんていうんだろう、引き算の美。というのか。

なんでもかんでも盛り込んでしまいがちの、私の生活に「必要なものだけぎゅっと詰め込んだほうがすっきりして動きやすいよ」と言われた気がした。

どこの塗らずに白で残し、どこを残りの2色で塗るのか。
計算し、一目で印象づけ、圧迫感はないのにインパクトが残るようにするのか。
こういうセンスって、どうやったら身につけられるのかしら。





サヴィニャック作品の魅力の一つに、効きまくっているシャレ、があると思う。

このマギーブイヨンのポスターは、「スープの容れ物の鶏」がブイヨンを飲んでいるからまだいいけれど、中には「スープを飲んでいる身体が半分ない豚さん」という作品もあって、「ダークでディープでオトナでスパイシー、でもあっけらかんとコドモみたい」なシャレがしれっと入っている。

「うっわ~、効くわ~。すごいわ~。最近、こんなひりひりを潜ませたやり取りってしたかしら」と思いながら、見ていた。

有名な牛乳石鹸もヨーグルトも、よく考えるとなかなかすごいぞ。







楽しかったのは、DUNLOP提供による、ダンロップポスターごっこコーナー。
車体がないタイヤだけの車に人が乗っているデザインの中に入れる仕様になっている。

むむむ。
こういうとき、一人で行くと残念だよね。






作品を見ながら思ったのは、「最近、自分の暮らしについて考えていないなぁ」ということ。
サヴィニャックのたくさんのポスターを見たせいかしら。
この商品を使うと、こんな素敵なことがありますよ、というコピーがたくさんあった。

以前はこれでも「自分の暮らし」についてもうちょっと考えていたんだ。
ちょっとだけ背伸びしたり、素敵なものをちょっとだけ持とうとしたり。
自分が気になることは手間暇かけていた。

パンを焼かなくなってどれぐらい経っただろう。
手帳やノートをがりがりと書かなくなってどれぐらい経っただろう。
ブログも書かなくなった。
お気に入りのものを置くコーナーを作っていた。
お花も一輪挿しに入れて飾っていた。
お布団もしょっちゅう干していた。


年齢を重ねたこともあるだろうけれど、どこかすごく手抜きをしている自分がいた。

そう、年齢を重ねるということはこれまでの澱が表面に浮かんでくるんだ。

「まったくのなし」にはできないけれど、澱を取り除くあがきもしてもいいんだと思う。
そうでなくても肌の張りは失われ、黒い髪は白くなる。



そんなことを思いながらサヴィニャックさんのポスターを見ていた。