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切なくてあたたかいふたりぼっち / アーノルド・ローベル展 ひろしま美術館

2021/06/05

 


背が高くて陽気で前向きなかえるくん。
人見知りで後ろ向きながまくん。

このふたりの物語を読んだことがあるけれど、気持ちが揺すぶられて落ち着かなくなってしまう。

それなのに作者のアーノルド・ローベルさんの作品が集まる特別展があると知り、美術館に行ってきた。




この展覧会の魅力のひとつに、ローベルさんがどうやって絵本を作ったか、の舞台裏がのぞけるところだ。
どんなお話にするか、が書かれた彼のノートに書かれたメモ。
文章と絵の割り振りと、見開きにしたときのレイアウト。
文章や絵に対して、スタッフとやりとりしたコメントやメモ。
それらが見やすく展示されている。



ポスターやチケットに書かれている「Alone Together」は、がまくんとかえるくんの4冊あるうちの最後の本に収められている、最後のおはなし「ひとりぼっち」のしめくくりに出てくることばだ。

ネガティヴながまくんをかえるくんは辛抱強く励まし支え包み込む。
でもかえるくんはそれを面倒ともいやとも思っていない。
やりたいからする、喜びだからする、といった感じで愛に溢れている。
がまくんもかえるくんによって行動を変えることによって、悲観や落ち込みから解放される。

どちらかといえば、後ろ向きに落ち込んでいくがまくんをかえるくんが前向きに温かく励ましていく、ことが多い。

しかし、最後の話は違う。
がまくんはかえるくんが「ひとりになりたい」と書き残したメモを読み、「もしかしてかえるくんが落ち込んでいるのではないか」と思い、なんとかして今度は自分がかえるくんを励まそうと、がまくんが思いつくかぎりできるかぎりのことをする。
結局は不器用ながまくんは自分が準備したものを理想のかたちでかえるくんに届けることができなかったし、かえるくんは「落ち込んだからひとりになりたい」わけではなかった。
それでも自分のためにがんばってくれたがまくんにかえるくんは感動する。

そして出てくるのだ、「ふたりぼっちですごしました」というフレーズが。
かえるくんとがまくんがふたりで並んで座っている後ろ姿の絵のそばに。





器用に生きていける人ばかりではない。
多くの人が「自分は不器用だな」と思うだろう。

そんな自分を励ましてくれる存在はありがたいし、自分が誰かを励ます存在でいられるのは素敵なことだと思う。

そんな存在でいられたらいいなぁ、と思うと切なくて泣きそうで、なのに心はほんわりしていた。



カフェでがまくんのカプチーノを飲んだ。
ほんとはがまくんのチャウダーボウルも食べたかったのだけど、数量限定で売り切れていた。残念。


美術館に行けたことにも感謝を。





アーノルド・ローベル展 - 特別展 - [ひろしま美術館]