着物を着ると、背筋がしゃんとして、普段奥底に眠っているなけなしの女性らしさが浮かび上がってくる。
自分でも着物が着られるようになりたいと、簡単なレッスンに通ったものの、結局はずぼらな自分が災いして、着られないままでいる。
東京に行ったとき、着物を着る機会を得た。
着物と帯を選ぶところから始める。
ああでもない、こうでもない、と言いながら、洋服にはない柄や色合いに興奮しながら色の海に溺れる。
思い出していたのは、パーソナルカラーを見てもらったときのことだ。
葡萄モティーフ、大好き!
八掛(女性ものの着物の裏。表と同系色にしたり、衝撃的な色や柄にしたりしてお洒落や意外性を楽しむことができる)の色もかわいらしい。
ぎりぎりまで、これを着る!と思っていた。
帯も葡萄のお着物に合わせて決めた。
しかし、実際に着たのは全然別のものだった。
パーソナルカラーを見てもらったときもそうだ。
好きな色と似合う色は違う。
ほんわりとした色もよかったけど、もっと引き締まった色の着物、そして私に馴染むテラコッタの帯を選ぶ。
ちょっとだけ嬉しく、ちょっとだけ悲しい。
こういうとき、どっちを選んだらいいんだろう?
着たいもの?
似合うもの?
私の健次郎(OLYMPUS OM-D E-M10 MarkⅡ ミラーレス一眼のカメラの名前)の能力を得て、ほんわりと撮った着物姿。
ポイントは羽織。
丈が長い。
梅もまた、好きなモティーフ。
ぼんやりとにじんだように梅模様に、ちょっぴり葡萄の着物を選ばなかった自分が癒される。
自分の性格はきつくて容赦ない。
人づきあいにおいて、嫌われることが多い。
すごく気をつけて、距離を取ったりマイルドな表現をすることによって、このことで起こるトラブルを避けている。
淡いパステルカラーより、くっきりとちょっと深みのある色のほうが似合う。
女性らしいふわふわしたものより、モダンでシャープなデザインのほうが似合う。
それを着て、戦いに行く。
お洒落の装いではなく、戦闘服であり、鎧兜である。
強い人だと言われる。
強くありたいと思い、進む。
私の柔らかな部分は、奥底に仕舞い込む。
第一印象と先入観はなかなか変更できず、大切な柔らかな部分は誤解され捻じ曲げられて受け取られてしまうことが多い。
大切なものだから仕舞っておかなきゃ。
守らなきゃ。
自分に似合うモダンでシャープな着物を着て、自分の柔らかなものを模したような羽織を重ねる。
不思議な感覚。
奥底に仕舞い込んでいるはずのものを一番の表にまとっている。
綺麗に着つけてもらい、衣紋を粋に抜いてもらう。
ちょっと艶やかに。
そして街に出かけていった。
草履でしゃなりしゃなり歩く。
慣れていない所作で化けの皮がはがれないようにするのに、必死。
それでも、変身した気分で歩く。
女の子の気分で歩く。
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