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堀内誠一 絵の世界 / ひろしま美術館

 



SNSに「ぐるんぱに会いに行ってきました!」とポストしたけれど、実はぐるんぱ(写真左のゾウさん)とはそんなになじみがない(大人になって出会ったから)。

むしろぐるんぱの巨大ビスケットの右にいる「たろう」くんのほうが親しい(?)。

たろうくんは「たろうのばけつ」という絵本の主人公で、彼のバケツを友達の動物たちがそれぞれの理由で使いたいとやってくるのです。

「ややっ、たろうくんではないか!やほう!」と声をかけると、たろうくんは2人いました。

私が知っているたろうくんは福音館書店の「こどものとも」という、ハードカバーではなくホッチキスでぱちんと真ん中を製本している絵本で、毎月届くシリーズのたろうくんでした。

「たろうのばけつ」は右綴じ、左綴じの両方があり、それに併せて描き直されたため絵柄が違う。

というのを今回初めて知った。



こんな感じで、堀内さんの作品鑑賞が始まった。

「こどものとも」で見た本も多く、母と弟とで読んだ記憶も次々によみがえる。

「え、これも?」、「や、これもですか?!」、「ほねじゃ!」、「こぶたのまーち!!」とぶつぶつ懐かしんでいたけど「ふらいぱんじいさん」で思い出決壊。

ふらいぱんじいさんが終盤、柄が折れ曲がりぼろぼろになっていくのを見てせつなくなったけど、また楽しそうにいろいろ焼いて嬉しそうにしているふらいぱんじいさんで終わるのが「よかったぁ。よかったよう」と心底安心したのを思い出してしまい、止まらない。


堀内さんが挿絵を担当したものも、文も絵も担当したものもごちゃごちゃになりながら、ちびっこキリエと一緒に作品を見ていった。


解説にあったが、「ほんとに同じ人が描いたの?」というくらい、使う画材もタッチもデザインも変えて、「その作品にぴったりな絵柄」になるようにつくられていた。



堀内さんは幼い頃から絵が好きで、5、6歳のときのラクガキ(?)が残っていた。

驚いて解説を読むと、お母様がスクラップしてまとめておいてくれたので、12歳くらいの絵も見ることができた。

その頃から、レイアウト、というか「新聞っぽい」というか、構図というか、そういうセンスを感じられた。


絵本の作品の後、堀内さんが手がけた雑誌などのロゴや表紙のデザイン、装丁の作品の展示があった。

「an・an」、「BRUTUS」、「クロワッサン」、「POPEYE」、「Olive」などなど、「最先端を行くちょっとヨーロッパの匂いがする雑誌」がずらずら並んでいて「うーん」とうなるしかなかった。

びっくりするほどの量だし、どれも有名だし、今でも続いている雑誌でもロゴは変わっていないし、「ぴゃああああああ!ぴゃああああああ!」と心の中で叫びながら、その仕事を見ていた。


堀内さんはフランスに在住したことがあり、その頃のスケッチも素晴らしい。

そして街や国の地図を素敵なイラストで描いてある作品は「ほしい。大きい版でほしい。じっくり細部まで見たい。読みたい。楽しい!」とずっと思いながら他の作品よりも滞在時間多めにした。


堀内さんの机まわりが再現されているコーナーの解説に「愛用のカメラ、万年筆、手帳…」など私の好きなものがてんこ盛りに記載されていたので「堀内さんのカメラ、万年筆、手帳が見られるんですかっっっ!!!」と鼻息荒く見たが、なさそうだった。

がっかりしょげしょげ。

それでもミシュランが出したヨーロッパの街の地図が積まれているのを見て、ぐっときちゃった。

スマホもネットもない。あの頃の情報の入手方法や人との交流手段は限られているし、時間もお金もとてもかかる。

そんな不便な中の滞在はどうだったのだろう。それについては詳しくは解説されてはいなかった。



堀内さんもまた、「戦後の日本の子どもたちのために絵本を作った」人だった。

思わず、かこさとしさんを思い出す。

かこさんの作品展も、同じひろしま美術館で見た。

その恩恵を受けて育ってきたんだな、としみじみ思う。