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逃げ場のない三角州

2021/06/05

広島市の中心部は、1本の川が枝分かれした6本の川で作られた三角州で構成されている。

もっと正確に言えば7本の川が流れていたけれど、氾濫などのために2本を「太田川用水路」として1本にまとめたので、6本となった。

こういうことは、小学3~4年生で「わたしたちのひろしまし」という教材を使いながら、社会の時間に習った。
今はどうなっているのか知らないけれど。



以前、広島の刑務所から脱走があった。
そのとき、報道番組の解説で「広島は三角州ですからね。橋を封鎖すれば逃げ場がないんですよ」というのを聞いた。
なので刑務所を設置するには適した地形なのだ、と解説は続いた。
私はそれを「ほほう!」と思いながら聞いた。

川がようけ流れとるのう。
橋もぎょうさんあるのう。

と思っていたが、改めて「三角州に住んでいる」ことを感じたできごとだった。





さて。
この日は映画を見に行こうとした。
あまり行きつけない場所で、普段は使わない橋を渡らなければならない。
自転車を走らせていたが、ちょうど信号にひっかかってしまった。
私はその橋を渡らずに、そのまま南下し、すぐそばにある次の橋を渡ろうと思った。

しかし、その橋は工事中で封鎖されていた。

「じゃ、次の橋で」

私は呑気に南へ進んでいった。



しかし、行けども行けども橋はない。
目的地からはどんどん外れ、すぐに歩道もなくなり車道をちゃりちゃり走る。
河口に近づき川幅はどんどん広くなる。


えーーーーーー!!!!
えーーーーーー!!!!
あたい、どーなっちゃうの?!
映画、見られるの?!



自転車を止めようにも、車道をかっ飛ばしているので危険だ。
その前に車道を走っている時点で、スリル満点だ。

スマホで位置を確認することもできず、とにかく自転車を走らせた。







結局、すんごい南に大きな橋があってそこを渡った。
大きな橋は平坦ではない。
アーチ型になっている。
これを自転車で渡ると、結構な運動量になる。
そして、この橋はその中でも大きなものだったのでなかなかの傾斜がついていた。

私はすんごい遠回りをし、倍の距離を走り映画館へ走り込んだ。





いろいろ焦ったけれど、思い出していたのは「三角州」のことだった。
橋がなければ逃げられない。
別の脱走犯は瀬戸内海を泳いで渡り逃走したが、この寒空、川を泳いで渡るだなんてしたくない。

いやぁ、なかなかスリリングな地形に暮らしているんだなぁ、と思った。





ちなみに見た映画は伝言板にアルファベットを書くヤツ!