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living

2022/01/273


















もともと「暮らす」ことは苦手だったが、

今よりもうちょっと「暮らす」ことに積極的だったと思う。









いつごろから、こんなに「暮らす」ことに消極的になったのか、

とつらつら思い出してみると、

「カミーノから帰ってきてから」

というところに落ち着いた。









カミーノに行く前には、

ひとり暮らしをしていた。

学校や仕事で家を出る必要はなかったが、

家を捨ててやりたくて、結構強引にひとり暮らしを始めた。



それまでは「自立」がテーマだった。



「ひとり暮らし」は、「自立」の憧れだった。










けれど、「のびのびと豊かに暮らす」ことは結局できず、

身体を壊して入院したり、

つきあったボーイフレンドに振り回されたりして、

なんだかくたびれた状態で、

カミーノのためにアパートを引き払って、

あんなに嫌いだった家に戻ってきた。







カミーノでも「のびのび豊かに」は下手で随分くたびれたし、

そこでもBFに振り回されてたし
 

(結局、カミーノから戻っても半年くらい振り回された)、

「豊かに暮らす」のが上手なタルとの出会いは、

なんと心が休まったことか。







そして、家に帰ってみると、

窮屈でもあったが、

「ひとりじゃないって、なんて楽なんだろう」

と思った。





一から十まで、全部、気を張っていなくてもいいんだ。

というのは、すごくほっとさせた。















それからだ。



私は「自立」するための反抗心もなく、

気力もなく、

ただの「コドモ」として暮らすようになり、

今に至る。











でもなんだか、最近、

「このまんまじゃ、どうかなぁ」と思うようになってきた。









人の居場所に転がり込むことばかりを考えていたらしい
 

(「らしい」と言うのは、

つい最近まで自覚がなかったから。

まだ実感があまりないけど、

頭ではなんとなくわかっている模様)

私だけど、

「自分の居場所は、

自分にぴったりになるように、

自分で作らなくっちゃ!」

と、薄々感じているから。











でも、どうやったらいいのか、わかんない。

と思っていたけれど、

いたいた。

とっても身近なところに、

最適なお手本が。











私の母である。













どうこう言いながら、

「自律」していて、

いろいろ困ることもたくさんあるのに、

なんだか楽しそうに「暮らして」いる。



ときに庭を整え、

野に咲く花を摘んで飾り、

玄関を季節によって模様替えしている。







大雑把で

「ごはんは自動的に食卓に並び、

ごみは知らない間に消えていく」

という小学生並みの生活をして


(いやいや、小学生、もっと自立してるって)

ときに、ギスギスと余裕のない生活をしている私は、

たまに母をうらやましく思う。













残りの4カ月、

「暮らす」を意識して、生活してみよう。



もしかしたら、

「暮らす」がうまくなるかもしれないし、

「自分にぴったりの居場所」の作り方がわかるかもしれない。



あるいは、

「巣」を見つけられるかもしれない。

鳥じゃないけど。

ねこだけど。







だんだん涼しくなり、

そして寒くなるから、

こんなことをするにはぴったりな時期だと思う。



















■ 本日の写真



随分、人懐っこく近づいてきて、

「なでて~」

とからだをすりよせるのに、

見ているのは別のもの、

という、

まさに「ネコ!」というヤツ。



「ちょっと。

甘えるなら、こっち見なさいよ!」

と言うのに、振り向きもしない。



で、なでるのをやめると

「なんでやめるの?

なでて~」

とすり寄ってきて、

なでるとまた他を見てる。



ちょっとむっとしたけど、

なんだかうらやましかった。













■ 本日の一曲








「シャ・リオン」







秋も深まってくると、

この曲が聞きたくなってくる。



二つの相反する気持ちが生まれる。





ひとつは、ひとりで旅にでかけたくなる。

黄金色に染まる葉っぱを眺めながら、歩き、

疲れたら座り込んで赤いぶどう酒をじわりと味わいながら、

手帳に旅の日々を書きつける。







もうひとつは、収穫の恵みを感謝しつつ、

冬への準備をし、

しっかりと整えられたおうちの中で、

ブランケットにくるまり、

ろうそくの明かりにほっとし、

これまた赤いぶどう酒を飲みながら、

ことば少なにじわりと

心おきない友と話をする。





両方ともワインではなく、

おとぎ話のように「ぶどう酒」と言うのがよい。







そして、ちょっぴり切なくなるのだ。






私の中の「豊かに暮らす」イメージは、
この曲を聞くとふくらんでくる。