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段ボール箱3つ

2021/08/31






ちょっと仕事を早くあがり、
家族が出かけて、
ぽっかりと「ひとりの時間」がたっぷりと持てた夜。


どこかに寄り道しようかとも考えたが、
まっすぐに家に帰り、
押し入れの天袋から段ボール箱を3つおろした。




箱の中身は台所用品。

スペイン巡礼を機に、
私は仕事を辞め、
ひとり暮らしをしていたアパートを引き払い、
実家に戻った。


巡礼が終わったら、
また家を出ようと企んでいたが、
いまだに実家にいる。


そのときに詰めたままの箱。







自分の持ち物を見直すことが何度もあったが、
この箱3つだけは一切手をつけなかった。



それは、
もしかしたら来るかもしれない
「ふたり暮らし」
を夢見ていたから。



食器は大事。




「あのお皿になにを作って盛りつけようか」





少しずつ集めた食器は私の宝物。





でも、その夢は叶うことがない、とわかり。

ずっと気になっていて。






そして、「ひとりの時間」がやってきたときに、
私は箱を開いた。





ひとり暮らしをしていた頃のことを思い出し。

ふたり暮らしを夢見たときを思い出し。








どうしても別れられないものだけを残し、
私は手放すことにした。



残ったものは段ボール箱1つを満たすこともなかった。










「ああ、終わったのだ」、と。

ヴォノとのことは終わった、のだと。














この夜はひとりで缶ビールを1本開け、
ろくにご飯も食べず、
ふざけていた。


その後、
台風や大雨などで寒暖の差も激しく、
そして、
私は自分が脱皮をしているのを感じていたら、
体調を少し崩してきた。




熱がどーー、っと出れば、
また楽なのに
ヘンにこもるので、
異物がからだにあるようだ。





少し弱っているけれど、
ココロは元気。

そして、ちょっぴり誰かに甘えたくて、わがままが言いたい。