マフラーが届くであろう日。
私はその日を心待ちにしていた。
たった二日くらいのことだったが、
そわそわして、
不意に送られてきたものを見て、
喜ぶヴォノの顔を想像していた。
しかし、彼がそれを見る前に、
なんと私は彼に、
「私を手放しなさい。
私が送ったものを捨てなさい」
と言うことになる。
思ってもいない出来事に私は呆然としたけれど、
根っこのところで二人とも
「続けていきたい」
という気持ちが強かったので、
実際に別れることはなかった。
そして、帰宅したヴォノはやっと、
私の巻きずしのようなマフラーを目にすることになった。
ヴォノはとても気に入ってくれた。
私はなんだか照れくさくて、ぶっきらぼうになってしまった。
そして、服を扱う仕事をしているのに、
ヴォノはそのマフラーが私の手編みだということに
私が伝えるまで気づかなかった。
どこかのブランドのものだと思った、と。
マフラーを包むときに、
私はタグか小さなネームカードを入れたくなっていた。
「私が作ったもの」
を示す、何か小さいもの。
ヴォノの勘違いから、
私はますます
「勝手にブランド名を作って、つければよかった」
という思いを強くした。
ブランド名をどうしよう?
つらつらと考え出していたら、
ヴォノが
私の羊のアメリとキリエを足して
(ウールと作り手)、
「アメリエ」はどうだろう?
と提案してきた。
私はピンッとこなかったので保留した。
私の中に出ていたのは、
自分の名前
“Kyrie”
だった。
それからしばらく
私の好きなことばや字面を眺めていたけれど、
やっぱり
「私が創るすべてのものに名づける名前」
としてはこれがいい、と、
「Kyrie」
にすることにした。
それに「アメリエ」は、
羊のアメリがメインみたいなんだもん。
ヴォノにそう告げると、
「いいね」
と言ってくれたが、どこか腑に落ちなかったような感じがした。
アメリエも私は嫌いではなかった。
ヴォノは、
「さっそく明日、アメリエを巻いて出勤するよ」
とメールをくれていた。
そうだ!!
あのマフラーの名前を「アメリエ」にすればいいんじゃない?
ウールでひつじでキリエが作ったんだから。
それを話すとヴォノもとても気に入ってくれた。
なので、
ブランド“Kyrie”の最初の作ったものの名前は「アメリエ」(マフラー)になった。
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Halさん
近いうちに書きます(笑)
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『私を手放しなさい』って穏やかじゃないですねぇ。
事情の分からない私に、余計な事は言えないけど。
根っこのところでそう思ってないのに、
どうしてそんなことを・・・って思っちゃった。
まぁ、仲直りしたなら良かったのでしょうね。
部長の書くヴォノさん、とっても素敵です。