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赤い鞄の物語

2021/08/23







素敵な革の鞄を見た。

そこからヴィジョンが見え、
そして流れるようにストーリーが私の内側で始まった。




* * * * * *

最初の物語




私は赤い革の鞄から元気よくほぼ日手帳を取り出し、
仕事の打ち合わせのために訪れたカフェのテーブルに開いた。
そこでは、アイディアがどんどん出て、
話をするのがとても楽しい。

打ち合わせが終わって、
お互いにどんな仕事になるのかわくわくした表情になっている。

私は赤い鞄に手帳を仕舞い、
ストールを首にまく。

そして、肩に鞄をかけると、
相手の人が言う。

「素敵な鞄ですね」

私は嬉しく、誇らしく、ちょっと照れたように
「そうでしょう?
とても気に入っているんです」
と答える。



外に出て、相手の人と別れ、
ひとりになった私は改めて仕事の手ごたえを感じて、
「Yes!」
とポーズを決め、
軽快な足取りで歩きだす。






* * * * * *



次の物語




赤い革の鞄から出てきたのは、
目に鮮やかなターコイズ・ブルーの革で作られたポーチ。


赤から出る青が意表をついて、
自分自身でもよく「はっ」とする。


これもまた、
「素敵ですね」
とほめられる。





* * * * * *


次の物語




私は作業場を訪れる。

すでにデザインは決まっているけれど、
私の手にぴったりのグリップの太さや
私のからだにぴったりの持ち手の長さを見てもらう。

そして、赤い革を見る。

もしかしたら、
「こんな色はどうですか?」
「ここはこんなふうにしたらどうですか?」
と素敵な提案があるかもしれない。

または、私から、
「こうするのはどうでしょう?」
と何かアイディアが浮かんでくるかもしれない。



鞄とポーチのオーダーをしたあと、
そこでケーキとお茶をごちそうになりながら、
数か月後に届く自分にぴったりの赤い革の鞄に思いを馳せる。





* * * * * *


小さな物語



仕事でスーツを着ても似合い、
プライベートでラフな格好をしても似合う赤い鞄は、
私のお気に入り。




* * * * * *




ちょっと見ただけなのに、
私の中ではイメージがしっかりできて、
うっとりしている。


すぐにオーダーしないのは、
私の中でまだ機が熟していない感じがするから。


でも、それはもうすぐ。



それまで私はうっとりと、
深い赤の鞄を思う。