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もしスイス滞在中にiPhoneを持っていたらどうなっていただろう


 もう10年以上前、夏のスイスに2か月半滞在したことがある。

スマホはなく、ケータイを海外で使うには専用のものが必要だった。


滞在したのはボーイフレンドのおうちで、彼は週5日、日中は仕事にでかけていた。

私は好きにしていい、と言われていたので好きにはしていた。

しかし閑静な住宅街だったので刺激もなく、ちょっとした街に行くにはバスがよかったけれど当時の日本円で往復1000円くらいかかってしまっていた。

「時間ならあるから歩いてみよう」とチャレンジしてみたけど、40分くらいは歩かなくてはならなくて、それもすぐに諦めてしまった。


話す相手もおらず、ネットもなく。

持ってきていた本は「ダ・ヴィンチ・コード」の文庫版上下。あとはノート。ラジオ英会話のテキストとCDは持って行ったかな。やる気になれなくて全然勉強しなかったけど。

強要はされなかったが居候状態だったので、家事をちょこちょこやっていた。

日帰り旅行もしたけどさ。日常ではなかった。


その頃もブログは持っていた。今はもう削除して存在しないけど。

ふと「スイスにいたときiPhoneを持っていたらどうだっただろう」と昨日、考えてしまった。

PCからの更新より不慣れで「くちょーーーーー!!!」と叫びながらも、ブログを更新していたんじゃないか、と思った。

スイス滞在の終わり頃、私はノートの後ろのページに「日本に帰ったらやりたいことリスト」を書き、また「日本に帰ったらブログに書きたいことリスト」も書いた。

自分の体験をぶちまけたかったのかも。

日本語でやり取りしたかったのかも。


あからさまなことはなかったけど、アジア人であることでそっと差別されたこともあった。

また見た目が若く見えたので、ボーイフレンドが若いアジア人に騙されているのではないか、とささやかれたこともあった。

スイス・ジャーマンという「ドイツ人が聞いても理解できない」と噂のドイツ語はわからない。もちろんドイツ語もわからない。

英語は堪能ではない。

車がないと行動範囲もとても狭い。

思ったより暑くない夏。


日中、ひとりでいることは私にとって結構なストレスとなっていった。

お楽しみは言語表現のないクレイアニメ「ひつじのショーン」だった。
あとは言葉は全然わからないけど、すっごい長い間放送されているっぽいドラマ。花屋の50代っぽい女性が30代っぽい男性と恋人だったのが印象的だったなぁ。日本にそんな設定のドラマ、なさそうだし。あ、言葉はドイツ語だと思う。


もしあのとき、iPhoneがあったら。ネットとつながっていたら。

私の寂しさは少しは解消されたのだろうか。

ブログを通して、誰かとやりとりしていたのだろうか。

あ、TwitterやInstagramがあったらどうだったのかな。


そんな「if」を考えてしまう梅雨入り前のまだ涼しい6月のある日のつれづれなる想像。