うちの近所に公的な花壇がある。
多分、市の管轄で緑化なんとかとか憩いなんとかの目的なのだと思われる。
街なかの定期的に手入れされたり、植え替えられたりするものではなく、ほったらかしにしていて近くの人に「なんだったら手入れしてよ」みたいなものだと思う。
そんな花壇がそのあたりには散らばっていて、それまで植わっていなかったような花が生えていて、ときどき草を抜いたり、萎んだ花を摘んだりする人たちもたまに見かける。
しかし、今回私が触れるのは市の思惑とは外れた手入れの仕方をされている花壇だ。
そこは他とは異なっていた。
まるで自分の畑のように扱っていた。
ちょっとした機械も入れ、大きな肥料の袋やホースもそばに積まれた。
花だけではなく、野菜も植えられていた。
おそらく問題になったのだと思う。市の持ち物を我が物顔で使っているのだから。
随分前に「このあたりの花壇の世話をしてくれてありがとうございます。そのことについてお話があるので世話をしている方はこちらまでご連絡ください」と点在する花壇のそばにそんな看板がちらりほらり掲示された。
しかし、私物の畑のような市の花壇は変わることはなかった。
手入れをしている人を見かけたことがある。
眼光鋭いおじいさんで、なんとなく怖い雰囲気なのでできたら関わりたくなかった。
季節に合わせたお花も植えるので写真に撮りたいこともあったが、おじいさんがいると諦めた。
おじいさんはせっせと世話をしていた。
肥料も安くないし、苗だって種だって自腹だろう。私が見る限りでは誰も咎める人はいなかった。
今年の春まではきちんと手入れがされていた。
桜を撮るついでに人がいないのを確認して、私もその畑の花の写真を数枚撮った。
異変に気がついたのは、最近のことで早朝に散歩をしたときのことだ。
畑にはエノコログサがわんさと生えていた。
エノコログサというのは「ネコジャラシ」とも呼ばれる雑草で、ふさふさもけもけの緑の穂が特徴的である。
それまで雑草はあまりなく綺麗に整えられていた畑はエノコログサで覆われていた。
エノコログサは強くてなかなか抜けないし、抜いても抜いてもすぐに生えてくる、土の手入れとしてはやっかいなヤツだ。
おじいさん、どうしたのかな。
明らかに手入れされていない畑がひどく気になった。
おじいさんがやっていたことはよろしくないことだろう。
それとは別におじいさんの安否が気になった。
暑いしコロナもあるし、ご高齢に見えたし。
私はそっとエノコログサの畑を気にしておこうと思った。
荒れていく畑は寂しかった。
※蛇足ながら、冒頭の写真はエノコログサではありません。
「アジサイが撮りたかったのに、季節を逃してしまった。残念」と思いながら、アジサイっぽい植物を撮ったもの。
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