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THE 新版画 版元・渡邊庄三郎の挑戦 / ひろしま美術館


 行く前に思ったのは、
「ひろしま美術館、オトナ向けに攻めたな」
ということだった。


7~8月のここ数年の美術館の特別展は、絵本の原画やアニメ、まんが、恐竜などなど「夏休みの親子向け」のものが多かった気がする。

広島県立美術館の「安野先生のふしぎな学校」もそのひとつだと思う。
大人も面白いけど、子どもも面白い。
その子どもが美術館、というところが好きかどうかは知らないけれど。


さて、ひろしま美術館の2022年夏の特別展は、渡邊庄三郎。

申し訳ないのだが、お名前を聞いてピンとこなかった。

作品を見て「あ」と思った。「これ、『なんでも鑑定団』で見たことある!」


展示の解説では渡邊さんは「庄さん」と呼ばれ、版画の道具の「バレンくん」との掛け合いをしていた。

その庄さんは、明治末期、浮世絵が売れなくなり、「このままでは技術が廃れてしまう」と「時代に合った浮世絵」を作り出していく人だった。

彼自身は絵を描く人でも彫り師、摺り師でもない。

しかし、原画をオーストリア人のカラペリに描かせ、それを木版画にしていく。

来日したカラペリが描く日本はどことなく江戸期の浮世絵とは雰囲気がまったく違っているのに、どこかしっくりなじむような、そんな「ちょっと目を引く」木版画だった。


それまでの浮世絵の版木の作り方や摺り方を継承しつつも、わざと版木を軽石でこすってガタガタの跡が出るようにしたり、バレンの跡が残るような摺り方をしたり。

題材も浮世絵でよく見たようなものから、時代と共に変化したものへ。


なんていうか、うまく言えないけど「目を引く」作品ばかり。

「どうしてわざわざ木版画にするんだろう。原画を描いている人は画家としても素晴らしい作品を描いているのに」と思いながら見ていたけれど、浮世絵を基礎とした木版画の技法が、原画にはない表現になっていてぐぐっともっとひきつけられるものになっていた。


もう、どうして私の語彙力と表現力はうまくいかないんだろう。

出てきたのは「和モダン」ということばで、そんなことばがチープすぎてどうしようもないのだけれど、明治、大正と時代が移っていく中で、日本の近代化に伴う変化にぴったりの作品なんだなぁ。と感じた。


「髪」という作品が、39枚の版木を用いて摺られている映像を見た。

あまりに淡い色をちょこっとのせるだけのものもあり「え?どこ?なに?」と変化がわからないほど細かい色の変化に感嘆。

上半身裸の女性が長い髪を洗っている姿で、浴衣を着ているのだけれど、模様も何枚も何枚も版を重ねている。

そのあと、鹿の子縮緬(ちりめん)の着物を着た女性の作品があったのだけれど、「わぁ、綺麗!」と思った瞬間、「これ、版木を彫るんですよね。あの細かい柄を彫るんですよね。どうやってもこの着物、色が2~3色は重なっているように見えるから、この柄の版木がそれだけあるってことですよね」と思い、くらくらした。

その後は版木と摺りのことを考えると、冷静に作品が見られなくなったのでそういうことは考えず「うわあ、綺麗!!!」と作品を楽しむことにした。



一番印象的だったのは入浴中の裸婦の作品。

お風呂での湯気や、温まった肌のほわほわ感を出すために、主線を空摺りしてあった!

空摺り、というのは色をのせない版木で摺ること。
そうすると紙の表面がデコボコしてエンボス加工したみたいになる。

なので、主線が描かれておらず、紙の凹凸だけで表現されていた。

えー、なに、その発想!その技術!

空摺りは知ってたけど、それ、そんなふうに使うの?!

と一番驚いたし、狙い通りの表現となっていた。







鑑賞後はカフェでひと休み。

もちろん大輔(Canon PowerShot G5X Mark Ⅱ)も一緒。

しかしまだ慣れないため、余計なものが写った写真が撮れてしまった。むむううう。

久しぶりのメロンクリームソーダは、アイスとソーダの縁の「ソーダがアイスに冷やされてちょっとだけ凍ったしゃりしゃりしたところ」を食べるのが好きです。



THE 新版画 版元・渡邊庄三郎の挑戦 - 特別展 - [ひろしま美術館]