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もう一度訪れたい神戸のバー #EdgeRankBloggers

2021/06/05


私の中の「素敵な大人」へのイメージの中に
「ちょっとこだわりのある、上質で素敵なものの楽しみ方を知っている」
というのがある。


食事だったり、持ち物だったり、遊び場だったり、人だったり。
それも隠れ家的な「他の人がそんなに知らない場所」にあったり、老舗だったりしたら、シビれちゃうね!

そんな中でも「なじみのバー」を持っている大人に憧れたけれど、
結局、コドモ要素が多分に含まれたまますくすくと育って今に至るので、
「おひとりさまバー」も数回しかやったことがない。


そんな私だけど、もう一度訪れたいバーがある。

JR新神戸駅と三ノ宮のごちゃごちゃした街の間にある小さなバーだ。
確か、ツタが絡まっていて、アートや文芸やアカデミックな雰囲気の漂う外観だったと思う。

神戸に行くたびにそのバーの前を通るのだが、ひとりではどうやっても入ることができなかった。

そもそもバーというもの自体が、私に合っていない。
喫茶店でプリンアラモードをひとりでウキウキ食べてる、というのはとてもしっくりくるのだが、
「一人でバーでアルコールを楽しんでいる」、というのはどうもしっくりこない。

それにバーに行きつけていないので、お作法がわからないのだ。
それでもまだ「ああ、世間知らずのコが背伸びして来たんだね」というぐらいならまだしも、
私もオトナになったので、そんなゆるゆるな感じでは許されないお年頃になってしまった。


ずっと気になっていたバーにやっと入れたのは、「保護者同伴」だったから。
そのときおつきあいしていた人と神戸で会い、私が気になって仕方ないバーがあるから一緒に行こう、と誘い、二人で訪れた。

中はこぢんまりしていて、暖かな雰囲気だった。
素敵な上等に見えるハンティングハットをかぶった「大人の男性」が主らしい。
私たちはカウンターの隅に座ることにした。

恋人も夜の大人の男性の遊びを知っていたので、ここの流れは彼のエスコートに任せることにした。
威圧的でなく、さりげなくでも洒脱なバーの主に、彼は丁寧に真面目に受け答えしていた。
私ははしゃぐのを抑え、その二人の遣り取りを聞いていた。
心地よい空間だった。

「うちの地元にあったら、機会を見つけて何度か訪れたい」
と思った。

職場の飲みのあと、一人でそこを訪れて、静かに〆のお酒を味わって、主と軽く会話をし、うっとりとした余韻のまま、バーを出る。
なんていうのがいい。
憧れの「なじみのバー」にしたい。

かつて関西にいたことのある彼は主と一緒に、私が知らない「アリバイ横丁」のことなんかを教えてくれた。
ほかにもお酒の話をしたり。
私はその方面に明るくないので、それをアルコールに酔ってきて頭でぼんやりしながら眺めていた。

楽しいし、幸せ。


私が酔っ払い始めたことに彼が気づくと、お店を出ることにした。
ホテルへの帰り道、「また来たいね」と話しながら夜道を歩いた。


結局、それが最初で最後となり、二人で訪れることも叶わなくなった。



最近、ふとそのバーのことを思い出すことがある。

ひとりで行きたいなぁ。

もう、あの頃の私とは違う。
お作法は知らないけれど、少しはマシに振舞えると思う。
いざとなれば1杯目はアルコールで、2杯目はソフトドリンクやお茶を飲めばいい。

あんなお店、こっちにもあるといいのになぁ。
でも、きっと神戸にあるからこそ、いいのかもなぁ。


いい大人なんだけど、大人になりきれていない。
多分私が「なじみのバー」を持つことになっても、そのまんまなんだと思う。

だって、私に大人は似合わないんだもの。





■2016年1月の宿題

メールマガジン「Edge Rank」の1月の共通テーマ「おとな」に沿って、この記事を書きました。


メルマガ「Edge Rank」1月の共通のテーマは「おとな」 #EdgeRankBloggers | 明日やります