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旅の喪失と略奪

2017/10/01



東京から帰って2週間近く経つのだけれど、まだなんだかシャキっとしない。

「心ここにあらず」ということばがぴったりのよう。
マブイを落としたのなら、もっと放心しているのかしら?
私の魂はまだ広島に戻り切っていないみたい。


この激しい喪失感と自分ではないものがたっぷり注入されている感じと、どう説明すればいいんだろう。


自分の魂がつきたてのお餅のようで、小さくちぎっては投げ、ちぎっては投げしていたような気がする。
お会いした人や私が訪れた場所に。

ちっちゃくちぎられたお餅のような私の魂は、あるものはその人の心臓に突き刺さり、あるものはそこの土地の転がる落ち葉を追いかけ、あるものは天空から街を見下ろし、あるものは誰かの肩に乗ってその人が見ているものを一緒に見、あるものはどこにもとらわれず風に乗って遠くまでいってしまっているのだろう。

そして反対に、私もお会いした人や訪れた場所のかけらを心臓に突き刺し、あるいは奪い取り、肩に乗せ、ノートブックに忍ばせ、靴下の中に隠し持っているのかもしれない。


広島に戻ってすぐはシャキっとしないので、「わー、困った!」と思っていたが、
この「魂つきたてお餅ちぎっては投げ」のイメージを持つとなんだか愉快に思えてきて、
「そのうち、遊び疲れて帰りたくなった魂のかけらは帰ってくるし、そのままのものはそのまんまだし、私も自分が取り込んだ他の魂がそのうち私のものと同化するに違いない」
と考え、シャキッとしなくても平気になっていった。


好き放題遊んでいるのはいいけれど、中には私の魂のことだもの、迷子になっているものもいるかもしれない。
そのときは、「広島はあっちだよ」と教えてやってほしい。
余裕があれば、温かいミルクティーを飲ませてやってください。
ワインやビールはダメ。
酔っぱらってすぐに寝ちゃうから。
ウィスキーはチョコレートと一緒に。
チーズはパンと一緒に頼む。