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ここのへ

2021/12/303








「懐かしいなぁ」
とコォは言い、ここのへを手に取った。


そして私のぶんも買い、
「お湯を入れて飲んでね」
と手渡した。





暑くなる時期だったので、
スチール缶に大事にしまい、
寒い冬のある日、
私はここのへの封を開けて
中身をカップの中に入れた。


お茶漬けの素に入っているあられくらいの大きさの
黄色い丸い粒々がざらざらとカップの底になだれ込んだ。

私はお湯を注ぎ、
スプーンで書きまわしながら、
袋に書いてある文字を読む。



もち米と砂糖から成り、
ゆずの風味をつけたものだった。



黄色い甘い飲み物が出来上がり、
飲んでみると
初めてなのに、
かつて祖父母の家の近くにあった神社で似たようなものを飲んだような、
そんな微かな記憶が
私の奥からやってきたが、
確かめるすべはない。