編集

!Buen Camino!

2022/02/034







タルに電話をした。


彼の誕生日に電話をしたら留守だったので、
メールをしたら
友達とホテルで誕生日パーティーをして楽しく過ごしたそうだ。

ああ、
彼のやり方だなぁ、と懐かしく思った。


そのメールの中に2月末にカミーノに旅立つ、と書いてあったので、
出発前の最後のチャンスだと思い、
電話をかけ直した。



私の英語力はガタガタに落ちていたし、
電話、という相手の表情も動作も見えないのだが、
相変わらず私たちはわかりあうことができた。


丁度、カミーノにむけて荷造りをしている最中だったので、
二人でカミーノを懐かしみ
思い出を語った。


近況も話した。






タルが体調を著しく崩し、
「もうカミーノに行けないかもしれない。
このまま死んでしまうかもしれない・・」
と聞いてから、1年以上が経った。

これまで数回、
お互いの誕生日に電話をしたが、
その中で一番元気のいい声だった。


私は安心した。



もう一度、彼がカミーノを歩けるのが嬉しかった。







仕事を早めに辞めたタルは
「時間はたっぷりある」
と、ドイツから歩き始め、
もっとも緑が美しい5月にスペイン入りする予定だ。


うらやましくなる。






私が歩いてから6年が経とうとする。

今になってようやく、
あの巡礼の旅と気負いなく向き合えるような気がする。

そして、あそこで見た真っ青な空をもう一度見たくて、
私を駆り立てる。



また歩きたい、と切に思う。






巡礼者はすれ違うたび、
別れるたびにこう挨拶をする。

!Buen Camino!


先頭のびっくりマークは、スペイン語なら、上下さかさまになるのだが、
今、それが打ち出せないので、
このままでご容赦を。



「よい道を」
「よい巡礼を」






私たちはこう言い合って、電話を切った。





嬉しかった。









■ カミーノ

カミーノ・デ・サンティアゴ。

スペイン巡礼の道。

たくさんのルートがあるが、
有名で難易度がそう高くないのは
「フランスの道」と呼ばれるもので、
スペイン北部を東から西へ約800kmある。

私が歩いたのも、このフランスの道。

ゴール地点はサンティアゴ・デ・コンポステーラという都市にある、
古く大きな聖堂。
ここにキリストの十二使徒のひとり・ヤコブの遺骸が祀られている。

「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」とは
星の野のヤコブ、という意味で、
巡礼者はヤコブに会いに黙々と歩く。






■ 本日の写真

人んちの花壇。

「チウリップ」の名札にシビれるね!






■ 本日のお知らせ

タルって誰?
英介って誰?

という方のためにこのブログに出てくる登場人物を紹介したものがあります。

よろしければ、そちらも参照してください。

カテゴリーの「characters」でも出ます。