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べんがらの壁に酔う / ひがし茶屋街 [金沢]



まず赤い壁を見たのは、兼六園内の茶店の座敷だった。
素敵な色だな、と印象に残った。


金沢旅行を決めてからちょっと調べてみたとき、茶屋街が見学できることを知って興奮した。
お茶屋遊びができるほどの甲斐性も粋も経済力も包容力も芸事の技もないのだけれど、やたらと見に行きたくて仕方なかった。


金沢には4つの茶屋街があり、その中でもひがし茶屋街は広く残っていて、茶屋を利用したカフェやショップも並ぶ。
街並みも独特の格子窓があり、情緒的だ。




その中でも「志摩」と「お茶屋美術館」が気に入った。

二つは同時代の建物であり、隅々まで凝った美しい内装も魅力的だった。




赤い壁の独特の色は「べんがら」という赤色顔料であり、酸化鉄の色である。
というのを帰宅してから調べた。

こんな赤い壁に囲まれたお部屋に、美しく着飾った芸妓さんが来て、美味しいお料理が並んで……と考えるとめちゃめちゃエロスを感じてしまった。




なぜ、あの説明文を写真に撮らなかったのか今でも悔やんでしまうのだけれども、お茶屋に通う旦那さんはただ受け身で楽しむだけではだめだ、と書いてあった。
芸妓さんの芸を楽しみ、そして自分も芸を磨いて一緒に楽しみ、それから芸妓さんをも楽しませるくらいになるのが理想だそうだ。
そんな甲斐性、ありません。
が、そんな人はもてもてだろうなぁ、と思う。

また、贔屓にしている芸妓が成長していくのを楽しむこともする。
まだ未熟な見習いが座敷に上がることもあり、ますます成長を見るのが楽しそうだ。

こうやって、芸は深まり、文化の層が厚くなっていく。






と、そんな説明文を読み、七宝焼きがあしらわれている襖の取っ手や実際に使われていた簪や櫛、食器などを見ると自分がどこにいるのかわからなくなってきた。






前日ににし茶屋街資料館を見たのだけれど、ひがし茶屋街の「志摩」で強烈な洗礼を受けた。
とにかく芸術の奥深さとべんがらの紅、そしてそれらから感じる淫靡な空気にヤラれてしまった。

いつまでも見ていたかったけど、そこそこで引き上げた。
外に出てしばらく、人気のない小さな神社の隅っこに座り込んでしまった。


紅に酔った、と思った。

すんごいくらくらした。

なにがどう、というわけではない。
けれども、酔ってしまった。


普段から勝手に想像だの妄想だのをする癖があるのだが、その感覚のなにかにとらわれたようで、ずっとそれが刺激され、このままじゃ熱が出ちゃうんじゃないだろうか、と思うほどだった。







「志摩」の次に「お茶屋美術館」に行った。
そこもべんがらで塗られたお座敷、使われたお道具、隅々まで神経が使われた上等なものや雰囲気を感じた。


情けないことにそこを見学して出ると、Twitterでは「とにかくエロス」「すべてがエロス」と壊れたレコードのようにエロスツイートをし、呼吸も少々困難になり、冷たい飲み物を飲んでは熱い吐息を吐き出し「べんがらすごい。べんがらの酔った。なんなのあのべんがら」と紅に魅せられてどうにもならなかった。

同じような状態に、貴腐ワインを飲んだときになったなぁ、とぼんやり思い出しながら、休憩所でへろへろになっていた。



全てが美しく酔っ払い、手が届かない夢のような世界だった。

あたしはまだまだコドモだった。




お着物が好きな人にもぜひおすすめ。
着物自体はなかったけど、和装の小物を見るだけでもうっとりしちゃうよ。






■参考

ホーム|金沢ひがし 志摩

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※写真撮影は、「志摩」はケータイ・スマホ、コンデジなどレンズが突き出していないもののみ可。
このブログ記事の写真はすべて「志摩」で撮影。
このときほど、「iPhoneXSが来い!!!」と思ったことがなかった。

※「お茶屋美術館」では写真撮影不可。




「志摩」にはお茶室があり、お抹茶もいただける(有料)。
小さいがセンスのいいお庭を眺めながらお茶をいただくのは、素敵。
掘りごたつ形式になっていて正座しなくてもいいので、足がしびれない。