ものごとを決めたり、選択するとき、
「自分の王様は自分」
ということばは、私の中心にある。
いつ頃からこのことばが中心に存在し始めたのか、あまりよく覚えていないが、
それを持つきっかけは覚えているような気がする。
元々、自分の中にはなかったことばだ。
思い当たるのはふたつ。
一つは、「NATURAL」(成田美名子、白泉社)。
主人公山王丸ミゲールのバスケ部のチームメイトJRのことば。
幼馴染のアリーシャからちょっと迫られ、
だからといってそんなにあっさりいただきません、とお断り。
「ふつう」はどうでもいい
おれの主(あるじ)はおれ様だ
自分の掟に従うJ
Rは自信たっぷりにこう言った。
もう一つは、多分、「ほぼ日刊イトイ新聞の本」(糸井重里、講談社)だったと思う。
今、確認が取れないけど。
糸井さんがコピーライターの仕事に疑問を持ち、
また仕事が減っていく中、自分は次に何をしたらいいのか悩み、考え、
今ではいろんな意味で注目を集めるネットサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を始めるまでと、
始めた直後のことが書かれている。
この中で、収入がなくて自信が持てない。
自分が一つの会社で、自分が稼ぐ社長じゃないと自信が持てない。
という感じの内容の文言が出てきた、と記憶している。
これは後日調べて、この部分を書き直す。
私はスペイン巡礼に行くために仕事を辞めた。
他にも理由はあったけど。
その後、ほぼ2年、仕事をしない時期があった。
就職しようにも不景気だし、
結構いい年だし、
そしてなにより、自分が何がしたいかわからなかった。
それを相談したいけれど、
ハローワークでは業種を絞ったところからの相談しか受け付けていなかった。
仕事に縛られない自由人として、つつましくも楽しく生活できるものだと思ってた。
でも現実は違った。
減っていく貯金。
仕事を持っていないことでの自信喪失。
そこから派生する人との接触拒否。
運動不足で太っていく身体。
心配する家族。
居場所がなかった。
私は毎日のように図書館に行っていた。
こんな中の糸井さんのことばは重く響いた。
初めて買ったほぼ日手帳か何かに書き留めたような気がする。
また、別のことで私は居場所がなく、いらついたり疲弊したりしていた。
父の介護のことだ。
母がメインでやっているが、
元々ソリが合わない父のその頑固さや暴言に、
母は、私が父に暴力をふるうのではないか、と心配したほどだった。
そんな中から、私は
「自分の王様は自分」
ということばを持つようになったと思う。
こんな状況だけど、私はいつも自分で決定し、自分で責任を持って生きていこう、と、
そういう意味もあった。
同じ頃、私はスイスと日本での遠距離恋愛をしていた。
彼は私のことをとても愛し、私も愛していたが、
国境のこともそうだけど、とにかく
「そんなんじゃ、私は未来が描けない!」
と不満を持つようになった。
そのことについては二人で話し合ったが、
未来のことを言う私に彼は
「僕たちは“今”を生きているんだよ、キリエ。
未来じゃなくて今を見るんだ」
と言うばかりだった。
彼の言いたいこともわかる。
でも15歳以上も離れていること、
物理的距離も離れていること、
未来が描けない不安、
そして、私は人生2度目の「君のことは愛している。でも君とは結婚をしようとは思わない」を言われている。
こんな、
不安で、
自信がなくて、
ちっとも魅力的じゃない自分なんていやだ!!
そして、私は自分で自分の道を歩くことを決める。
もう、待たない。
自分の王様は自分。
自分のことは自分で決める。
余談だけど、次の恋愛で私は3回目の「君のことは愛してる。でも君とは結婚するつもりはない」を言われることになる。
ほんと、あたしの女性としての自信は粉々に砕け散ったわ。
そして、今も修復不能。
どうしていいかわからない。
答えやアドバイスを知っている人は教えてほしい。
付け加えておくと、3人ともその人の性格やそれまで歩んできた人生を知ると、
そんなことを言ったのは頭では理解できる。
「私だから」ではなく、「結婚というものをしない。したくない」ということも。
「王様」ということばを使ったのには、意味がある。
私の中で「王様」というのは「わがまま」なのだ。
「ぼくは王さま」(寺村輝夫、理論社)の王さまのイメージ。
勉強は嫌いで、遊ぶのが好きで、卵が好きで、いつも大臣を困らせている王さま。
そんなふうにわたままが言いたい。
私はなにかあると、我慢してそれを言わない。
あるいは素直になれなくて(どうやって素直になっていいかわからなくて)言えない。
今は多少上手になったので、甘えたりわがままも言うけど。
がんばるの、きらーい!
わがまま、いいたーい!
これ言うの、大好き!
そんなわがままでいるために。
「自分は王様でわがままし放題!言いたい放題!」
そんな意味を持たせた。
「自分の王様は自分」
なかなかいいと思う。
ねぇ、王様でいる?
従者になっていない?
王冠は頭の上に載ってるのよ。
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