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切る髪 切れない髪

2021/08/242







マリオに髪を切ってもらった。


毛量が多く、
くせも強い私の髪はこれまで美容師泣かせで、
「今度こそは」
と美容院に入るたびに、
困ったような、
めんどくさそうな顔をされて、
嫌な気持ちでいっぱいだった。



マリオは私の髪の毛を見て、
そのくせに合わせて髪を切ってくれる。

なので初めて切ったとき、
そしてその次、
彼が提案してくれた髪型が気に入って、
私は毎回、髪を切りにいくのが楽しみ♪




今回も二人で、
「卵を大切に扱う」
「まるごと命を食べる」
なんて哲学っぽいことを話しながら
じょきじょきっとやってもらった。


この美容院では本はたくさんあるけれど、
「時間つぶし用の雑誌」を手渡されることはなく、
お決まりの、
「今日はお休みですか?」
「お勤めはされているんですか?」
という会話もない。




私が自分の髪のことでこれまで悲しい思いをしてきたことを話すと、
「自分の髪にはくせがないからうらやましい」
「まとまらない髪?
まとめなくていいのでは? と思う」
など、
私の髪が嬉しくなるようなことをたくさん話した。



切るときも、
私の曖昧な、
「少年のように」
「Tシャツとジーンズで
『冒険に行ってくるっ』という感じで」
「切りたいです」
ということばに対して、
「着地地点を決めます?
それとも行き当たりばったりで?」
と切り返し。

私は即興が好きなので、もちろん後者でお願いした。



そのときの場所。雰囲気。
マリオの状態。
キリエの状態。
ルイージの状態。

それに合わせて、
その時にしかできないことをする。

のが好き♪





この日はお気に入りのピアスをつけていった。

大体、美容院に行ったら
ピアスは外されることが多いけれど、
ここではしたまま、
シャンプーも
カットもされた。



「今日はピアスをつけていらっしゃるから、
ピアスが見えるように、
ここの髪を短く切ってみました」



をををう!!
こんなこと、初めて言われたわ!!


嬉しい♪







私の前髪を何度も何度も櫛で梳いてはうなるマリオ。

まとまらず、どうやっても顔の中央、
目の周りや
鼻のあたりに飛び出してくる一房の髪。



「この髪、切れません」



!!!!!




「主張してくるんです」



はぁ・・。




「このまま様子を見てもらって、
いとおしく思ってもらえればそのままに。

どうしてもうっとうしいようだったら、
切る、
というのでどうでしょう?」



私はその一房がとっても私らしい、と思って、
喜んでそのままにしてもらうことにした。




それにしても、
「切れない髪」があるだなんて。

それを受け入れていとおしく思ってほしいって。





なんて素敵なんだろう!






ますます気に入った。












髪を切ったあとは、ルイージ 特製のジンジャーシロップ入りのミルクティーをいただき、
穀物いっぱいの黒パンに
彼特製のジェノベーゼソース添えを出してもらった。


髪を切ったあと、
楽しくお茶をしたり、
おしゃべりをしたりする美容院。


なんて素敵なのかしら!!





こうやって、私はますます「私らしく」なってお店を出た。