10年以上前の夏の2か月半、スイスに滞在したことがある。
厳選した荷物の中に宇多田ヒカルのアルバムを1枚入れ、滞在先のおうちで聞いていた。
人んちのオーディオだし、ドイツ語なのでよくわからないから、再生と停止、取り出しのボタンしか触らなかった。
アルバムを入れると、その順番に曲が流れた。
ひとりぽっちでおうちにいるときには、それを黙って聞いていた。
そのアルバムを今になって、久しぶりに聞いた。
アルバムの曲順に。
「この次にはあの曲。その次はあの曲」と、記憶の中の順番通りに曲が流れる。
そしてなぜかその夏は雨が多く、寒くてずっとベッドの中にいたことや薄暗い中ひとりで適当に用意して食べた朝や昼の食事のことを思い出した。
それからあれこれ書きつけていたノートの表紙の柄とか。
まだTwitterもInstagramもないころだし、スマホがあったかどうかも覚えていない。
とにかく私は自分でネットに触れる機会がなかった。
もしこれが、向こうでブログなりSNSなりを更新できる環境なら、もうちょっと違う楽しみ方があったかもしれない。
私のノートには「日本に帰ったら書きたいブログネタ」や「日本に帰ったらやりたいこと」のリストがずらりと並んだ。
今、音楽のアルバムを出しても売れないとか、出しても単品(?)でDLとかサブスクとかして…とアーティストのもどかしい思いを読んだり聞いたりする。
"No music, no life!" の人ではないので、そんなに音楽漬けになることはないけれど、好きなアーティストさんのアルバムのCDは何枚かは持っていて、おまけにバラードやしっとりよりじゃかじゃかしたもののほうが好きだったから、プレイヤーに流す曲のナンバーを登録してリピートして聞いていたので、あまり説得力はないのだけれど。
アルバムでまるっとごろっと体に染みついているのも、いいなぁ、と思って。
どうやってもそこでしか聞けない音声番組があって、Spotifyに登録したんだけどさ。
びっくりするほど無料で好きな曲がマイリスに突っ込めちゃって、「いいの?ほんとにいいの?!」とどきどきしちゃったんだけど。
自分にとって懐かしい曲も探して突っ込んでみたんだけどさ。
無料だと、ランダム再生だけなんだよね。
何曲か、アルバムで覚えている曲もあって「次はあの曲!……じゃなかった。そうか、Spotifyじゃないものね」とがっかりすることもある。
いいとか悪いとかではなく、1枚のアルバムで記憶しているものは思い出す量が流れとなって大きくうねるんだなぁ、という体験をしてる。って話。
ランダム再生も「神ランダム再生」があると聞くので、そういう偶然も楽しそうだし。
コメントを投稿
別ページに移動します