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コオロギ騒動


 


昨夜、我が家は虫の声が大音量で聞こえていた。

家族が「家の中にいる気がする」と言っていたが、私はまさか、と取り合わなかった。

が、「コンロの下にいる気がする」という家族のさらなる言葉に、よくよく耳を澄ませてみると、聞こえます。

コンロの下の収納部分から秋の虫の声がっ!!!


カマキリ先生ェ、これはなんの虫ですか?

教えてェェェェ!!!


人の気配は感じるのか、コンロに近づくと声が止む。


私がお風呂に入り、上がって、真夜中過ぎても虫はえぇ声の大音量で鳴きまくっている。

正直音が大きすぎてうるさいが、私の心はそれどころじゃなかった。


収納はでっかい引き出し式で、そんなに隙間はなさそうだ。

どうやって我が家に侵入し、コンロの下に入ったのかわからないが、自力で開閉はできないだろう。

いつか収納のすみっこでからからになった姿で発見され「おまえはもしやあのときの…」とむかし話かなんとかぎつねみたいなせりふは言いたくない。

このままじゃ、飢え死にしちゃうよ!!!


私は一縷の望みをかけて、コンロ下の全ての収納を少しずつ開けて寝ることにした。

ほこりとかなんとかより、飢え死にはやばいじゃん!

カマキリ先生の「昆虫すごいぜ!」を見ているんだ!夏休みスペシャルだって寝落ちしながら見たんだ!

成虫になってからそう長くは生きないはずだったよな、おまえ!

なんとか自力で脱出してくれぇぇぇ!!!!



翌朝、すなわち今朝のことですよ。

朝食を食べていた家族が叫んだ。

「なにかいる!」

なんだよ。

「なに、これコオロギ?」


コオロギ?

台所の隅に逃げた、というので室内用ホウキでその隅をなぞると出てきた!

コオロギだ!

ちっちゃい!

捕まえろ!

捕獲!

がんばっても手の隙間からすぐに出る。

そして恐ろしいほどのジャンプ力!!

ああ、カマキリ先生ェ、今だけ虫取り網をあたいに貸してください!!!



が、お腹が空いているのかジャンプにキレがなく、動きも鈍い、気がする。

いつぞや草はらで出会ったコオロギは、もうちょっとでかかったし、たくましかったし、動きも迫力があって力強かった。と記憶している。

よって、しばらくして無事捕獲。

両手でふんわり包んで収納。収納?

家族は「どうするん?」と聞くので「外に逃すんだよー!このままじゃ飢え死にしちゃうよーーー!!急いでーー!どっか外に通じるところを開けてーーーー!!!!」と叫び返した。


コオロギ、無事解放。

なんだかよろよろしているけど、外傷はなさそう。

早く食べ物と飲み物を!(飲んだっけ?)


そんなことがあった秋めき9月の朝の騒動。