先月、友達の誕生日プレゼントにワインを贈ろうと思い立った。
ワインの知識がない。
飲むと「おおおお!」とは叫ぶけど、それを表現する言葉も飲むお作法もぶどうの種類もワイナリーについてもワインの作り方も知らない。
なので、ざっくりと「せっかくのお誕生日なので華やかな雰囲気のものを」とひどく曖昧なことを言ってみた。
贈る相手が女性だとわかると、軽いもの甘いものピンクのものかわいいものも出してくださったが、結局「一番おっとこ前」のワインを選んだ。
そのおっとこ前ワインが持つ物語がとても壮大で、でも切なくて悲しくて、大切なものだったので、そのエピソードをぐいぐい押して、プレゼントした。
友達も興味を持ってくれたが、私が聞いたものを全部話したので、詳しく聞かれてもわからず「では、そこで食事をし、お話を聞こう!」ということになった。
問題のワインの物語はこうだった。
アメリカのカリフォルニアで腕のいいワイン醸造家が縁あって、オーストラリアに渡り、近くのワイナリーと協力してワインを作っていた。
オーストラリアでもよいワインを作っていたが、今年のオーストラリアの大規模な山火事により葡萄畑消失。
2019年のワインが最後のヴィンテージとなる。
うをををををを。
泣いちゃうぅぅぅぅ!!!
こんなの聞いたら泣いちゃうぅぅぅぅぅ!!!!
ぶどうの木を植えてワインを作れるようなぶどう収穫まで3年かかるんだって。
手間暇かけて作られてるんだよ。しみじみ。
そんなことをお聞きしながら、食事とワインを楽しむ。
写真のユリイカ2017は、同じ時に仕込まれた白ワイン。
なのに、色が全然違う。
というのは「澱(おり)を引く(取り去る)」時期をあえてずらしている。
透明度が高いほうは早めに澱を引いたもの。
黄金色が濃いほうはもっと長く澱と一緒に熟成させていたもの。
いや、もう。
全然、味が違う!
お店の人が「上澄みと底」と表現されたように、明るいワインはさっぱりと飲みやすく甘いのにくどくなく、さわやかでフルーティ。
それこそ華やかな雰囲気の、上品な味。
濃いワインは味がもっと複雑。
ふくよかさ、厚みが出るのにやぼったくなく、軽そうに見えて「もっと奥を見せて」って追いかける感じ。
両方ともするする飲めちゃって、びっくりするほどなくなるのが早かった。
「危ない!これは危ないぞ!」とアルコールに弱い私はどきどきしちゃった。
しかし、あっという間になくなり物足りなくなったので、次は赤。
ボードの書いてあるワインリストで選ぶが「樹齢52年平均」に魅かれてこれにした、ヴェルネイ2017。
樹齢が長いと収穫量が少なくなるので、そのぶんぎゅっとした仕上がりになるそうだ。
赤特有の渋みが舌をざらりとさせるけど、「赤飲んでる!」と実感できて肌が粟立つほど興奮する。
お店の人は「エレガント」という表現を使ったが、私はそれにはあまりしっくりこなかった。
でもなんていうんでしょう、白の軽快感はなくて、重くてしっかりしていて、深く深く沈んでいく、というか。
そこまで重いワインじゃなかったと思いますが、そんなことを感じながら「樽ではなくグヴェグリで熟成させるワイン」など、お話を聞き、他のお客さんがオーダーしたワインの物語も聞き。
めっちゃ「オトナの遊びをした!!!!」という時間だった。
いつ、どこで、どういう醸造家が、どのぶどうでどんなふうに作ったのか。
そこにはたくさんの物語が詰め込まれていて、そのお話を聞くのがすっごくすっごく楽しかったぁ。
そういえば、ボジョレー・ヌーヴォーが間近ですね。
私は飲む予定がありませんが、こうやって作られたワインが私たちの人生を豊かにする一片でありますように。
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