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友達と野菜のおいしいお店でたっぷり野菜を食べたあと、「もうちょっと飲もうか」とバーに出かけた。
彼女は私より大人スキルが高いので、近くの小ぢんまりしたバーに連れていってくれた。
私は看板にあったフルーツいっぱいのカクテルの中から挙動不審になりながら選んでいた。
友達は「ウィスキーが飲みたいです」、「スモーキーなのが好きです」とバーテンダーさんとやり取りをして、とりあえず「華やかなウィスキー」を注文し、私はパインとマンゴーのカクテルを注文した。
彼女のグラスは背が低く、そして丸く削られた氷が入っていた。
「うをっ!」と私は心の中で叫んだ。
丸い氷!!!
何度か本の中で見かけたことがある、あれだ!
丸く綺麗に削るのもバーテンダーさんの技術が表れる、とか、氷が均等に溶けて味がどうのこうの、とか。
それを彼女は時折指で氷を回しながらちびりちびりと飲む。
ぎゃあああ、オトナ~!!!
「大人になったら行きつけのバーの一つか二つ持っていて…」という夢を描いていたが、どうやっても「バーとあたい」という組み合わせがしっくりこない。
「カフェとあたい」、「リュックとあたい」、「恐竜とあたい」ならすっごくしっくりくるのに。
なので、旅先でもあまり背伸びをしないようにしている。
だって、バーってお作法がいろいろありそうだし、こんなコドモが無謀にむやみやたらと突撃する場所ではない、と思っているからだ。
あれこれ話をしていて、「もう一杯飲もうか」という話になった。
友達は、華やぎはあってもスモーキーさに欠けたのか、今度はスモーキーに重点を置き、バーテンダーさんとお話して島系(?)の6つの醸造所のウィスキーをブレンドした不思議なものにした。
「で、どうする?」
「うーん、悩んでる」
「バーテンダーさんに言ったら、いろいろ教えてくれるよ」
知ってます。
「メニューにないカクテルでもおっしゃってくだされば作りますよ」と言われ「ドラえもん」だの「タラちゃん」だの言って困らせたことがあるあたいなのだ。
こんなテイストの、こんな気分にあう、アルコール度数が高いだの低いだの、あれこれ言えば、それを叶えるような素敵な飲み物を提案してくださることを。
「あのね……、丸い氷がいいの」
友達とバーテンダーさん、「は?」みたいな空気になりました。
「さっき、あなたが飲んだ丸い氷の、いいなぁ、と思って。
だって、大人じゃーん!
いいなぁ、いいなぁ。思って。
だから、味がどうこうより、『丸い氷はどれを頼んだら出てきますか?』って、いうのが大前提なの」
二人の空気は「まさか、そっち?!」というものだったが、二人は優しく対応してくれる。
「丸い氷、ってウィスキーになるよ」
「うん。いいの」
「飲むの?」
「はい、飲めます。
ウィスキーでもブランデーでも飲めますよ、おいしく。
なんで?」
「いや、あまりウィスキーを飲むイメージがなくて、ワインが多いと思っていたから」
「ご飯食べるときはあまりウィスキーは飲まないなぁ。
多少、強いお酒は飲めるんですよ、泡盛とか」
「ああ、そうだったね。
でも、ロックになるよ」
「はい、それも大丈夫。
薄めるの好きじゃないんです。
ロックでチェイサーがいいです」
「ああ、チェイサー!」
そして、「丸い氷」で「ウィスキーのことはあまりよくわからないので、初心者向け」という、ひどい要望を出した。
カウンター越しに私たちの対応をしてくれたバーテンダーさんは、あとから推測すると、どうやら臨時のお手伝いでやってきていらっしゃるようで、そのお店のバーテンダーさんに小声で「丸い氷の……」と伝えていらして、申し訳なくなった。
ヘンな客だよな、あたい。
そしてやってきましたよ、素敵なカッティングの底が分厚くてどっしり思いグラスに、丸い氷の、あまり癖のない飲みやすいウィスキーが!
「ありがとうございます」
あたい、ご満悦。
友達はさりげなくチェイサーをバーテンダーさんにお願いしてくれていた。
バーテンダーさんも「写真を撮らなくてもいいんですか」と声をかけてくれた。
「いいんですかっ?!」
私の食らいつきに「ええ、どうぞ」と優しく答えてくださる。
バーは大人の場所ですからね。
なんとか映えとかできゃあきゃあしてはいけないのだと思い、最初の一杯も撮りたかったけどいい子に我慢したんだ。
そしていそいそと健次郎(OLYMPUS OM-D E-M10 MarkⅡ)をリュックから取り出し、がしがしと撮影。
ふう、満足。
そして「いただきます」と飲む。
ウィスキーって喉を通っていく最後のところでそこはかとなく淡い甘みがするりと抜けていくのが楽しくて、好き。
「ああ、こんな甘みをあなたは隠していたんですね」という感じの。
だけど、アルコール度数高いから気をつけて飲む。
私が一人で悦に入っていると、声がした。
「ケータイじゃなかった……」
それはバーテンダーさんの声だった。
友達は私とのつきあいが長いので、ミラーレスなんだけど黒くてちょっとごつくてファインダーをのぞく健次郎を知っているのでいつものことだったんだけど、バーテンダーさんにとっては「は?」だった模様。
「ええ、ケータイじゃありませんよ。
お陰で素敵な写真が撮れました」
私が撮っているときに「ボトルも一緒に」と勧めてくださったバーテンダーさん。
本当にありがとう。
そこから三人でお話して、大人の時間は過ぎていきました。
おしまい。
丸い氷の大人の時間
友達と野菜のおいしいお店でたっぷり野菜を食べたあと、「もうちょっと飲もうか」とバーに出かけた。
彼女は私より大人スキルが高いので、近くの小ぢんまりしたバーに連れていってくれた。
私は看板にあったフルーツいっぱいのカクテルの中から挙動不審になりながら選んでいた。
友達は「ウィスキーが飲みたいです」、「スモーキーなのが好きです」とバーテンダーさんとやり取りをして、とりあえず「華やかなウィスキー」を注文し、私はパインとマンゴーのカクテルを注文した。
彼女のグラスは背が低く、そして丸く削られた氷が入っていた。
「うをっ!」と私は心の中で叫んだ。
丸い氷!!!
何度か本の中で見かけたことがある、あれだ!
丸く綺麗に削るのもバーテンダーさんの技術が表れる、とか、氷が均等に溶けて味がどうのこうの、とか。
それを彼女は時折指で氷を回しながらちびりちびりと飲む。
ぎゃあああ、オトナ~!!!
「大人になったら行きつけのバーの一つか二つ持っていて…」という夢を描いていたが、どうやっても「バーとあたい」という組み合わせがしっくりこない。
「カフェとあたい」、「リュックとあたい」、「恐竜とあたい」ならすっごくしっくりくるのに。
なので、旅先でもあまり背伸びをしないようにしている。
だって、バーってお作法がいろいろありそうだし、こんなコドモが無謀にむやみやたらと突撃する場所ではない、と思っているからだ。
あれこれ話をしていて、「もう一杯飲もうか」という話になった。
友達は、華やぎはあってもスモーキーさに欠けたのか、今度はスモーキーに重点を置き、バーテンダーさんとお話して島系(?)の6つの醸造所のウィスキーをブレンドした不思議なものにした。
「で、どうする?」
「うーん、悩んでる」
「バーテンダーさんに言ったら、いろいろ教えてくれるよ」
知ってます。
「メニューにないカクテルでもおっしゃってくだされば作りますよ」と言われ「ドラえもん」だの「タラちゃん」だの言って困らせたことがあるあたいなのだ。
こんなテイストの、こんな気分にあう、アルコール度数が高いだの低いだの、あれこれ言えば、それを叶えるような素敵な飲み物を提案してくださることを。
「あのね……、丸い氷がいいの」
友達とバーテンダーさん、「は?」みたいな空気になりました。
「さっき、あなたが飲んだ丸い氷の、いいなぁ、と思って。
だって、大人じゃーん!
いいなぁ、いいなぁ。思って。
だから、味がどうこうより、『丸い氷はどれを頼んだら出てきますか?』って、いうのが大前提なの」
二人の空気は「まさか、そっち?!」というものだったが、二人は優しく対応してくれる。
「丸い氷、ってウィスキーになるよ」
「うん。いいの」
「飲むの?」
「はい、飲めます。
ウィスキーでもブランデーでも飲めますよ、おいしく。
なんで?」
「いや、あまりウィスキーを飲むイメージがなくて、ワインが多いと思っていたから」
「ご飯食べるときはあまりウィスキーは飲まないなぁ。
多少、強いお酒は飲めるんですよ、泡盛とか」
「ああ、そうだったね。
でも、ロックになるよ」
「はい、それも大丈夫。
薄めるの好きじゃないんです。
ロックでチェイサーがいいです」
「ああ、チェイサー!」
そして、「丸い氷」で「ウィスキーのことはあまりよくわからないので、初心者向け」という、ひどい要望を出した。
カウンター越しに私たちの対応をしてくれたバーテンダーさんは、あとから推測すると、どうやら臨時のお手伝いでやってきていらっしゃるようで、そのお店のバーテンダーさんに小声で「丸い氷の……」と伝えていらして、申し訳なくなった。
ヘンな客だよな、あたい。
そしてやってきましたよ、素敵なカッティングの底が分厚くてどっしり思いグラスに、丸い氷の、あまり癖のない飲みやすいウィスキーが!
「ありがとうございます」
あたい、ご満悦。
友達はさりげなくチェイサーをバーテンダーさんにお願いしてくれていた。
バーテンダーさんも「写真を撮らなくてもいいんですか」と声をかけてくれた。
「いいんですかっ?!」
私の食らいつきに「ええ、どうぞ」と優しく答えてくださる。
バーは大人の場所ですからね。
なんとか映えとかできゃあきゃあしてはいけないのだと思い、最初の一杯も撮りたかったけどいい子に我慢したんだ。
そしていそいそと健次郎(OLYMPUS OM-D E-M10 MarkⅡ)をリュックから取り出し、がしがしと撮影。
ふう、満足。
そして「いただきます」と飲む。
ウィスキーって喉を通っていく最後のところでそこはかとなく淡い甘みがするりと抜けていくのが楽しくて、好き。
「ああ、こんな甘みをあなたは隠していたんですね」という感じの。
だけど、アルコール度数高いから気をつけて飲む。
私が一人で悦に入っていると、声がした。
「ケータイじゃなかった……」
それはバーテンダーさんの声だった。
友達は私とのつきあいが長いので、ミラーレスなんだけど黒くてちょっとごつくてファインダーをのぞく健次郎を知っているのでいつものことだったんだけど、バーテンダーさんにとっては「は?」だった模様。
「ええ、ケータイじゃありませんよ。
お陰で素敵な写真が撮れました」
私が撮っているときに「ボトルも一緒に」と勧めてくださったバーテンダーさん。
本当にありがとう。
そこから三人でお話して、大人の時間は過ぎていきました。
おしまい。
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