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会うこと話すこと傍にいること離れていること【2】

2021/09/162







翌日

本当なら、ヴォノと私は西条にいくはずだった。



西条といえば、京都の伏見、兵庫の灘と並ぶ日本三大酒処だ。


お酒が好きなヴォノなので、
酒蔵めぐりをして、
利き酒なんかをして、
のんびり町を歩くのは楽しそうだと思って、
お正月に提案していた。

ヴォノも関心を持っていた。




広島から近いけど、
そこで1泊しよう、と彼は言った。

それはすぐに私も同意した。



なにがどうだ、というわけじゃないけれど、
「実家」というのはみんなが気を遣って
くたびれるから。







土曜日の休みはたくさんはないので、
私は「ひつじのショーン」を見ながら、
旅仕度を始めた。




ヴォノからもおはようのメールがきた。




お互いに未練たっぷり。


でも、どうしていいかわからない。






どちらかが折れるわけでもなく、
不器用に
それでも西条に一緒に行くことにした。



もうちょっとゆったりとできるところで、
話したかった。
彼のことはわからないけれど、
私はそうだった。




昼に会い、西条に向かった。

ぎくしゃくしたままだったが、
ぽつりぽつりと話をした。

以前私が住んでいたところとか。
関東平野の感覚はなじめないとか。
梅が咲いているとか。




西条に着くと地図をもらい、
アドバイスを受け、
酒蔵めぐりをした。



そのうちにほぐれてきた。



でもいつものように手はつながなかった。




お酒も飲んで、お互いに気分もよくなった。





ちょっと離れたホテルまで歩くことにした。



お酒が回っていたし、
お互いに前の夜は眠れなかったようで、
少し寝た。



起きてどちらともなく話し始めた。

今度は寒くないし、
日本酒でからだもぽかぽかだ。



自分の気持ちや状況を話した。

文字通り「忙殺」されているヴォノは、
仕事の様子や愚痴を言うと私が心配すると思うと、
メールができなかったとか。




なんとかかんとか。



お互いが相手のことを考えて控えてしまったいろんなことが
うまくかみ合ってなくて、
伝わらなくなっていた。






このあと、私はホテルをチェックアウトするまで
ヴォノに甘えた。

「ヴォノのばーか。

『もうがんばりすぎなくてもいいし、
泣くところはここだよ』
って言ったのに、
ヴォノのところでも泣けないし、
がんばらなくちゃいけないじゃないかぁ!

じゃあ、私、どっかほかのところに行ってもいいよね?

私、旅する半野良ねこだもん。

おいしいご飯をくれる人のところに行ったり、
ふかふか寝床を用意してくれる人のところに行ってもいいよね?

飢え死にしちゃうもん!
寒いの、いやだもん!!」


ヴォノにぐりぐりぎうぎうしながら言ったら、
「仕方ないなぁ」
とヴォノもぐりぐりぎうぎうしてくれた。






すっごく嬉しかった。









楽しい時間はあっという間だったし、
酒蔵をめぐるのは狭い範囲だったし、
広島に戻った。




ヴォノは最終の新幹線で席を取っていた。

私はホームまで見送りにいった。



いつもなら、強がって、泣かないようにする。

行ってしまってから泣く。

でも、今回は泣いてやった。

わんわん泣いてやった。

我慢しなかった。







行ってしまうと、ぽっかりと穴があいたようだった。


帰りながら、また泣いた。





いっぱい泣いた。




泣けるっていいな、と思った。









コンビ継続のお知らせを友達にメールした。

ほっとしてた。









■ 本日の写真

西条の円座にて。

前の記事のカラー版。

エンジェルはちょっと見えにくくなるけれど、
温かみがあって、好き。