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10年待つ価値

2021/09/166






雨の降る冷たい夜の話し合い。

将来のことをなにひとつ具体的に約束できないヴォノ。

なにか確固たるものがほしいキリエ。


できないのは知っているけれど、言わずにはいられない。


ヴォノの問い。
「じゃあ、10年待ってくれ、って言ったら待てるの?」

キリエの答え。
「じゃあ、あなたは自分に10年待つ価値があると言えるの?」




ヴォノは何も言えなくなる。

そんな返答が来るとは思ってもいなかったようで。





10年待つ、ということは、
ほかの選択肢を選ばず、
ヴォノを選び続ける、ということ。

そうする価値があるのか?





私は、自分を待つ価値があるとは言い切れない。
だって10年どころか2カ月先のこともわからないんだもの。

でも、ヴォノには言ってやった。

「私といたら、
他の人といたら味わえない時間を共有できる。
私が枯れないかぎりそれは保証する」