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原爆ドームが街なかにあるということ

2021/06/052



広島を初めて訪れる方をご案内することがあります。
行き先には原爆ドームも含まれることが多いです。


広島駅で待ち合わせをしたら、まずは広島名物路面電車に乗って出発しましょう。
私は「ウェルカム・トレイン」と称して、ここの電車賃をごちそうすることが好きです。
ちなみにSuicaは対応していません。
PASPYかicocaは対応しています。
電車賃も値上がりしました。


広島の中心部は駅と繁華街が離れています。
それまでの街の発展と鉄道の関係で、こんなことになっています。

電車は繁華街に入っていきます。
デパートがあったり、歩いている人が増えたりしています。

そして、唐突に原爆ドーム前の電停に着くので、下車します。
驚かれることが多いです。
「こんなに街なかにあるんだ!」

かつてはこのそばに市民球場もあったし、私にとっては「当然のこと」だったのですが、最近、じわじわとなにかを感じています。



広い平和公園の敷地ですが、ここは最初から平和公園ではありません。
人々が暮らす街がありました。

原爆は「街」に落とされたのです。
誰もいない砂漠に落とされたのではありません。




そうか、街に落とされたのか。

改めてそう考えるとじわじわくるものがあります。
まだ言語化できませんが、どこかがむずむずします。




広島に生まれ育ちましたが、原爆と私はまだ折り合いもつかず、飲み込めてもいません。
親族に被爆者がおらず、戦争を知らない私でさえ、飲み込めないなにかがあります。

どうして「広島」というだけで、平和教育を受けなければならないのか。
どうして「広島出身です」と答えただけで、気の毒がられなくてはならないのか。
どうして、広島には古いものが残されていないのか。


きっとこれから先もずっと、折り合いはつかずに私は自分の生を終わらせるのだと思います。




原爆ドームが街なかにあるということ。
それは原爆が街に落とされたということ。

このことを胸に抱え、しばらく生きてみようと思います。