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むしろ男性のほうが共感できそう 映画「her/世界でひとつの彼女」

2021/06/19



見終わったとき、感じていたことは

イラっとする。

ムッとする。

だった。




※このあとネタばれがあるかもしれません。





仕事や仕事でない大きいプロジェクトやらがてんこ盛りで私に襲いかかってきたとき、
行きたい旅行にも行けず、
ときめきもなく、
なんだかかさかさしていたので、
「なにか、こう、ロマンティックなものが見たい。甘い映画とか」
と思っていたときに知ったのがこの「her」だった。




ちょっと未来のお話で、
高い階で大きな窓からの眺めも最高な眺めのマンションに住み、
別居して1年経つののに離婚の決断もできず、
テレフォン・セックスを楽しみ(これがなかなかうまくいかないんだけど)、
軽くつき合うならいいけど真剣なおつき合いはできずにデートで振られ、
相手にするのはもっと進化したスマートフォンのような機械で、
音声の指示だけでメールや新聞の読み上げをさせ、
閉じた感じの、イケていない男性・セオドアが主人公。


このセオドアがふとしたきっかけで、
高い学習能力を持ったAI・サマンサ導入。

サマンサと音声で交流することで、
セオドアの行動が変わっていく。


これまでの、発音はくっきり聞こえる男性ボイスの、
まるで執事かなにかのような機械ではなく、
ちょっとハスキーで柔らかく、喜怒哀楽もたっぷりの女性ボイスのサマンサとの会話は、
ウィットやユーモアに富み、
自分が寂しいときに慰めのことばを言ってくれたり、
素敵なアイディアを提案してくれたり、
ちょっとお節介な感じで、
「いつまでもベッドにいるんじゃなくて、起きて服を着て、外に出るのよ!」
なって言ってくれたりして。


サマンサは学習熱心で、
まるで目覚めたばかりの赤ちゃんのようで、
とにかく新しいものごとを覚えるのが楽しくて、
いろんなことに関心を持って、
すっごく充実して楽しそう!

そんな彼女にもセオドアは好感を持っていく。



お互いに魅かれあって、
うまく言えないけれどセックスもする。

それはとても自然な流れで、
豊かで官能的で満ち足りた時間に、私も感じた。




しかし、セオドアは人間で眠いときには眠るので、
サマンサはちょっぴりその時間、寂しく思い、
セオドアがデートしたり、
やっと離婚の手続きをするために妻と合うときには嫉妬したりする。

セオドアはそれをそんなに重要に感じていない。


サマンサは自分が人間ではなくて肉体を持っていないことにもコンプレックスを持ち、
彼女なりに考えたことを実行に移す。

それは私も気乗りしなかったし、
セオドアもそうで、結局うまくいかなかった。


でもそれがサマンサを変えるきっかけとなった。


「自分は自分らしく生きる!」
みたいな感じに決心する。

セオドアが寝ているときは、
他のAIなどと交流を深め、
知識や考えを深めていく。


それを知ったときのセオドアは嫉妬し、
自分も仲間に入ろうとするが、
人間のことばでない機械語(?)で会話するために、入っていけない。


そして、あんなにサマンサに
「君は機械なんだ」
みたいな接し方をしていたのに、
いざ彼女が機械で、
自分以外の大勢の人間の相手をし、
中にはセオドアと同じように恋愛をしていることを知ると、
嫉妬ややりきれなさをサマンサにぶちまけて、
ひどいことを言う。






なーんだか、ここまで書いても、
「男の自分勝手な感じをずっと見させられている感じ」だった。

彼女に好かれていると感じているときには、
はまりもするけれど、
自分のペースに彼女を合わさせる感じだったのに、
彼女が自立して、どんどん変化するに従って、
独占したり束縛しようとしたり。



いろいろあって、サマンサは去り、
そしてセオドアは女性の友達といい仲になりそうな雰囲気で終わる。

結局、「機械じゃなくて人間がいい」という感じなのかもしれないけれど、
失ってできた穴をすぐに埋めるような展開に辟易した。






ピンクやオレンジを使って、
甘くロマンティックに仕立ててあるポスターやHPで
女性向きに作られているなぁ、と思ったが、
これはむしろ男性のほうが共感できそう、と感じた。



マリオをこんな会話をしたときに、
映画の話になり、
「紅の豚」「かぐや姫の物語」 のことを話し、
私は「もー、男って勝手なんだからーー!!」といかっていたけれど、
マリオは「それが男のロマンなんですよー」と笑っていた。


そのときのやり取りを思い出して、ますます、
「これは男性が見たらすっきりするのかも」と思った。





まだまだ自分の中でこなれていなかったり、熟成していないものもたくさんあるけれど、
今のところはこういうものが私の中に残っている。