広島県立美術館の特別展の中で、一番見たかったのは「尊厳の芸術展」だった。
第二次世界大戦中、アメリカで日系アメリカ人が強制収容所に連れていかれ、
そこで過ごした人たちが作ったものだ。
とだけ、前もって知っていた。
随分前から私のテーマの中に「自分の居場所」というものがある。
場所や人になじめず、
またふらふらと自分が望まずに動いたり、
あるいは自分が動かなくても周りの人が動いたりして
「ある場所になじんで根を張る」ということがとても苦手だ。
けれど、結婚というものに正面切って取り組もうとしたころから、
「あたしはここにいるのーーー!
無視しないでよーーー!」
と、自分の居場所を示すために旗を掲げることにした。
(これまでは「誰も気づいてくれない」とすねすねしてた)
「尊厳の芸術」のコピーとして“生きる証だった”ということばが添えられている。
それに私は共感して、見にいった。
作品は撮影可能でWebに載せることも許可されていたので、
私が撮ったものを少しずつ載せていこうと思う。
最初に持った感想は
「思ったより明るかった」。
もっとドロドロと悲惨な感じがするのかと想像していたが、そんなことはなかった。
ほら、かわいらしい小物たんすでしょう。
生活の中のアートだ。
こんなにかわいらしいブローチやコサージュ。
こんなにかわいらしい千人針も初めて見た。
私がこれまでに見たものは勇ましい漢字が書かれていたが、生きて帰れないような壮絶な雰囲気でいっぱいだった。
厳しい生活の中で、使い勝手もよくデザインも素敵なものを作るパワー。
「私はここに生きている」という証。
私は内側から湧き上がるエネルギーの渦に飲まれていった。
しかし、入口のところで上映されてた8分間の映像を見て、それがより厳しいものから誕生したことを知る。
強制収容所では一人にベッドがあるだけで、しきりもなにもなく、プライバシーもなにもなかった。
厳しい環境の中で、山市さんは自分の名前を彫り込んだ表札を掲げる。
「自分はここにいるのだ!」
持ち物の持ち込みが厳しく制限され、
楽しみも制限されていた中で、
生活必需品を作り、
娯楽に必要なものを作り、
装飾品を作り。
私がさっき見ていたものたちは、そんな中で生まれたものだった。
あの、かわいらしいお花のブローチは貝殻で作られている。
両親が収容所に入っていた女性がその収容所を訪ねる。
貝殻は地面を掘って掘って掘って出てくるものだった。
また彼女の両親は娘に対して、収容所のよいことや楽しかったことばかり話したそうだ。
それは、アメリカで生きていく娘がアメリカに憎しみや偏見を持たないように。
ヒロシマの被爆者のことをふと思い出していた。
その映像を見たあと、私はもう一度作品を思い出していた。
私の中にこの強さと豊かさがあるのか。
それから東日本大震災のことを思い出していた。
様々なことが渦巻いていたが、やはり最初に持った明るさは消えることはなかった。
会場から出るとき、私の中で響いた言葉は、三輪明宏さんのものだった。
「文化は心のビタミンです」
実はこの展覧会のことを知って、前売り券を買いに行ったが売られていなかった。
不思議に思って調べてみると、入場無料だったので驚いた。
ゴッホなどの大きな特別展に隠れてしまっているが、
この小さな展覧会をしっかり見てほしい、と人に勧めたい。
■The Art of Gaman @Hiroshima Prefectural Art Museum
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