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『気づきの旅 スペイン巡礼の道』  小田島彩子

2022/02/17




 


2006年5月11日、スペイン巡礼の出発点に到着し、
翌12日から私はカミーノを歩き始めた。


いつからか私は5月11日を自分の中の「カミーノ記念日」に決めた。



カミーノから帰ってすでに5年が過ぎようとするが、
私はこれまでカミーノの本を一切読まなかった。

というか、読めなかった。



どうも、気持ちがカミーノの本を拒否してしまう。




3年くらい経ったとき、
巡礼の記憶の生々しさが薄れたかと思ったが、
そうではなかった。



それからまたしばらくして、
今年の4月末。
それまで図書館で何度も目にし、
たまに手には取っては、
また書架に戻す、
ということをしてきた本を借り、読んだ。


巡礼後、初めてのことだった。




本は他のカミーノのものより、
淡々と簡潔で、
面白おかしくしようというわけでも、
やたらとスピリチュアルな精神世界を書いているわけではない。

それが私にも心地よかったのか、
2日でするりと読んだ。




久しぶりだった。





よくも悪くも記憶は薄れ、捏造もされる。

それが生々しさを取り去り、
私はまたカミーノと向き合えるようになったのかもしれない。



ちょっと寂しいような、
嬉しいような、
そんな気持ちで本を読んだ。







このブログを新たに作ったときに、
私はカミーノやヨーロッパで撮った写真を使わないことに決めた。

いつまでもカミーノにしがみついている感じがして、
あまり好ましく思えなかった。

それに、「今」撮った写真を多くこのブログには載せたかった。



ふと、
「なんだかカミーノの写真が載せたいなぁ」
と思うことがある。

そんなときは、青い空を見たいときだ。

秋の澄んだ高い青空がカミーノの空と似ている、とも思うが、
透明度が全く違う。

無性に恋しくなり、
ザックを担いで歩きたくなる。



次はいつ歩くのかしら。



その時が満ちるのを私は待っている。







写真は本と
私がカミーノで使った巡礼者の印のホタテ貝と
カミーノで使った寝袋。